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脱炭素社会とは?カーボンニュートラルとの違いや取り組み事例を解説

脱炭素社会とは

SDGsやサステナビリティが注目される現在、特に環境に対する取り組みは多くの企業に求められています。
今回は企業の環境に対する取り組みの一つ・脱炭素社会について解説します。

低炭素社会やカーボンニュートラルとの違いを示したうえで、脱炭素社会の背景や実際の企業の取り組み事例なども解説するので、ぜひ参考にしてください。

脱炭素社会とは

最初に、脱炭素社会について説明します。

脱炭素社会とは、温室効果ガスの中でも排出量が特に多い二酸化炭素を、実質排出量ゼロにすることを目的とした社会です。

二酸化炭素の排出量をゼロにすると言っても、さまざまな製品が作られては廃棄される昨今、二酸化炭素の排出は避けられません。

また、人間が生きているだけでも二酸化炭素を排出しています。

そこで、避けられない二酸化炭素の排出があることを前提とし、二酸化炭素はできるだけ抑える取り組みと同時に二酸化炭素を吸収する仕組みを作る社会が脱炭素社会ということです。

低炭素社会との違い

脱炭素社会は炭素を「実質ゼロにする」と解説しました。

脱炭素社会と似たワードとして「低炭素社会」がありますが、低炭素社会は炭素を「少なくする」ことを目的としています。

脱炭素社会の実現の一手段として低炭素社会があると言えるでしょう。

低炭素社会のためには、「化石燃料の代わりに再生可能エネルギーを使用する」「二酸化炭素排出量が少ない製造方法を選択する」「自家用車を使わず電車などの公共交通機関を使う」などの手段が挙げられます。

脱炭素とカーボンニュートラルの違い

脱炭素と同じようなワードに、カーボンニュートラルがあります。

カーボンニュートラルも「実質排出量ゼロにする」という考え方ですが、二酸化炭素に限った話ではありません。

メタンやフロンガス、一酸化炭素などさまざまな温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す考え方がカーボンニュートラルで、二酸化炭素に限定したものが脱炭素です。

つまり、二酸化炭素の実質排出量をゼロにする場合は、脱炭素ともカーボンニュートラルとも言えます。

日本は2050年までにカーボンニュートラルの達成を目標としており、二酸化炭素をはじめ多くの温室効果ガスを排出する企業の協力は欠かせません。

いま脱炭素社会が求められる背景

上記で脱炭素社会や類語の意味について解説しました。それでは、なぜいま二酸化炭素に絞った脱炭素社会が求められているのでしょうか。

いま脱炭素社会が求められる背景として、以下の3つが挙げられます。

地球温暖化によって気候問題が悪化している

気象庁のデータによると、世界的にも2010年ごろから年々平均気温が上がっています。

地球温暖化が深刻化すると、多くの気候問題に発展します。
例えば海面上昇による水害や氾濫などがあり、川や海の近くに住む人にとっては命の危機とも言えるでしょう。

その他にも地球温暖化が引き起こす異常気象によって農作物が育たなくなり、食糧難に陥る可能性も十分にあります。
農業や漁業にかかわる人たちの収入源がなくなるリスクにもつながり、広い意味では炭素問題は貧困問題にもつながります。

このまま特に対策をしなければ、今後はより地球温暖化が進み、気候問題がより悪化するでしょう。

将来的な地球温暖化を抑えるためにも、現時点で脱炭素社会が求められています。

大量の炭素によって社会的弱者のインフラや健康が脅かされている

大量の炭素は、特に社会的弱者にとって大きなリスクをもたらします。

例えば、エジプトでは所得が低い世帯は家賃を抑えられる地下室に済む傾向にあります。エジプトで豪雨が起こった際、命や住処を失った人の多くは、地下室に住む貧困層でした。

そして、地球温暖化によって気温が上がった場合、電気代を払う余裕がない家庭であれば満足にエアコンを使えないでしょう。
室内にいながら脱水や熱中症によって健康や命が危機にさらされる可能性も十分に考えられます。

このように、大量の炭素が社会的弱者のインフラや健康を脅かしている現実があるため、脱炭素社会が求められるようになりました。

脱炭素社会はSDGsの目標である「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」などにも関連しています。

今後も人口増加による二酸化炭素排出量の増加が見込まれている

国連人口基金によると、2011年には約70億人だった人口が2050年には98億人にまで増加すると推測されています。

人口増加は、一人ひとりが排出する二酸化炭素の排出量増加にもつながります。

現在と同様に大量の二酸化炭素を排出する生活を続けていくと、自然の原材料の枯渇や空気汚染によって、将来の人口はまともに生活できなくなるでしょう。

将来に生きる人々が快適に生活するためにも、今のうちから脱炭素社会で二酸化炭素の排出を減らす必要があります。

また、二酸化炭素排出量を減らすと同時に、サステナブル経営を並行しなければなりません。

サステナブル経営ができていなければ、数十年間は脱炭素社会を実現できても、再生可能エネルギーや森林が尽きたタイミングで再び炭素社会に戻ってしまうでしょう。

日本が脱炭素社会を実現するために立ちはだかる課題

上記で脱炭素社会が求められている背景や、二酸化炭素のデメリットについて解説しました。

脱炭素社会は現代だけでなく将来の日本を救うことにもつながるため、すぐにでも実現すべきです。しかし、だからといってすぐに日本が脱炭素社会を実現することは簡単ではありません。

日本が脱炭素社会を実現するために立ちはだかる課題として、以下の2点が挙げられます。

再生可能エネルギー導入に多くのコストや人員を必要とする

2020年時点では、日本で使用するエネルギーの8割以上は化石燃料です。

化石燃料は大量の二酸化炭素を排出したり量に限りがあったりするなどのデメリットがある一方で、コストが安く大量にエネルギーを取り出せる・運搬や貯蔵が簡単などのメリットがあります。

環境的なメリットだけで言うと、枯渇しない・二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを選択したい企業が多いでしょう。

しかし、再生可能エネルギーは導入するまでだけでなく、導入後も多くのコストや人員を必要とします。

また、導入したあとも風や太陽光によってエネルギーの配給量やペースを左右されるなど、さまざま問題が発生します。

そのため、コストや人員に余裕がない中小企業などは再生可能エネルギーを導入・運用する点では、脱炭素社会に貢献しづらいという課題があります。

消費者にとっても再生可能エネルギーの電気代は割高な傾向にあるため、コストに余裕がある人でなければ選択しづらいでしょう。

企業は脱炭素社会の実現に大きく影響するため、企業がアクションを起こせなければなかなか成果になりません。

日本で脱炭素社会を実現させるには、コストや人員に余裕がある企業を増やすことや、企業にコストや人員を割く価値を伝えることなどが課題と言えます。

個人の二酸化炭素排出量が世界的にも多い傾向にある

日本では、企業だけでなく個人の二酸化炭素排出量も問題となっています。

全国地球温暖化防止活動推進センターによると、2021年度の1家庭あたりの二酸化炭素平均排出量は年間3,730キロでした。

特に電気から排出される二酸化炭素は全体の半分程度を占めており、家電や照明などの使用が理由です。

電気は生活するうえでは欠かせない要素であり、使用ゼロは現実的ではありません。
地球温暖化や在宅ワークが進み、室内では冷房を24時間つけっぱなしにする家庭も珍しくないでしょう。
冷蔵庫は電源を落とすわけにはいかず、防犯などの理由で照明を消さないという家庭もあるはずです。

個人の二酸化炭素の排出量を抑えるためには、個人が無理なく電力削減に取り組める製品やサービスの普及が必要不可欠と言えるでしょう。

脱炭素社会実現に向けた企業の取り組み事例

最後に、脱炭素社会実現に向けた企業の取り組み事例について紹介します。

業界や取扱い製品・サービスが違う場合でも、目的や考え方を参考にすれば他の企業でも真似できるポイントがあるかもしれません。

取り組み事例①:丸紅

大企業の商社である丸紅。丸紅の新エネルギー開発推進は、燃料アンモニアの開発によって脱炭素社会の実現を目指します。

アンモニアは燃焼時に二酸化炭素を排出しないうえに、再生可能エネルギーとしても使用できます。

燃料アンモニアが現在の化石燃料と同量またはそれ以上に普及すれば、二酸化炭素の排出や燃料枯渇を気にせずエネルギーを使えるようになるでしょう。

日本政府は2030年までに年間300万トンの燃料アンモニア導入を目標としており、実現のためには丸紅の力が必要となります。

丸紅の脱炭素社会における取り組みのポイントは、燃料アンモニアの開発力そのものだけではありません。

グループ企業が単独で脱炭素に取り組むのではなく、サプライチェーンで取り組むために年月をかけて綿密に事業化調査を進めている点や、パートナーと連携して実現を目指す点も、脱炭素社会の実現には欠かせません。

現時点では燃料アンモニアを化石燃料と同様に安価かつ広範囲に配給できるのか、次世代のエネルギーとしてサステナビリティに普及するにはどうすればいいかなど、課題は多々あります。

燃料アンモニアの本格導入はこれから先になりますが、目的や計画をあらかじめ公表しておき、ビジネスパートナーや株主などの支持を集めておくことが大切です。

また、自社で足りない知見や技術はパートナー企業と協力し補うことで、脱炭素社会の実現が可能となるでしょう。

取り組み事例②:パナソニック

家電などの電化製品メーカーとして有名なパナソニック。

パナソニックは法人だけでなく個人でも簡単に省エネできる家電の配給によって、脱炭素社会の実現に貢献しています。

例えば、「エオリア LXシリーズ」は今まで無駄に捨てられていた熱エネルギーを冷房に活用できるエアコンで、「2021年度省エネ大賞」では最高タイトルである経済産業大臣賞を受賞しました。

その他にも省エネ機能付きの家庭用冷蔵庫や加湿器なども開発しており、家庭からの二酸化炭素排出量削減に大きくかかわっています。

先述したように、企業だけでなく個人が排出する二酸化炭素も、脱炭素社会の実現には欠かせないポイントです。

パナソニックの省エネ家電は、個人が無理なく二酸化炭素排出を減らすうえで役立っています。

パナソニックは「生産・販売活動を通じて、社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与する」をサステナビリティ経営の軸としており、省エネ家電はまさにこの経営方針を表したものと言えるでしょう。

環境だけでなく社会や他企業なども考慮したESG経営を重視し、取り組み内容を決めることが大切です。

社会的な課題を踏まえ、自社ならではの解決策を実行することが、脱炭素社会の実現につながります。

まとめ 

今回の記事では、脱炭素社会について解説しました。

脱炭素社会とは「二酸化炭素の排出量を減らしつつ、二酸化炭素を吸収する仕組みを作り、実質排出量をゼロにする」社会です。

似たようなワードの低炭素社会は「炭素を少なくする社会」、カーボンニュートラルは「二酸化炭素以外の温室効果ガスも踏まえて実質排出量をゼロにする」という意味です。

二酸化炭素の排出量の増加は地球温暖化を促進させ、異常気象や災害などをもたらし、特に低所得者などの社会的弱者に大きな影響を及ぼします。

脱炭素社会はESG経営やサステナビリティなどの観点からも必要ですが、日本ですぐに実現させることは簡単ではありません。

日本企業が脱炭素社会を実現するには、目標やビジョンを公表してパートナーや株主の支持を集める点や、外部の人を巻き込める取り組み内容にする点など、ポイントを掴んで取り組むことが重要です。