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SDGs目標12:つくる責任 つかう責任とは?企業の取り組みを解説

SDGs目標12 つくる責任 つかう責任

日本で深刻化しつつある地球環境の悪化や資源の枯渇。SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」は、持続可能な生産と消費の実現に向けた新たなアプローチを提唱しています。

今回の記事では「つくる責任 つかう責任」の意義や背景についてご紹介します。NPOと企業が連携した取り組み事例も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

サステナビリティ委員会

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは、持続可能な生産と消費を目指すための目標です。
経済活動が活発になり、生活が豊かになっていく一方で、過剰な物資の生産や廃棄によって地球資源は枯渇しつつあります。

このような課題を解決するために企業や個人に求められるのは、単なる節約や削減ではありません。

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」は、限られた資源を効率的に活用し、良質な生産消費形態を実現することを目指して策定されました。

「つくる人」である生産者から、「つかう人」である消費者までを巻き込んだサプライチェーンを重視しており、それぞれが持続可能な社会のために責任を負うことが期待されています。

目標12のターゲット

「つくる責任 つかう責任」には、目標の達成に向けて11のターゲットが設けられています。
廃棄する食料を減らすといった個人向けの項目から、化石燃料に対する補助金制度の改革や生産体制の仕組みを変えるなどの政府・企業向けの項目まで、多角的な視点で設定されているのが特徴です。

企業・政府・消費者など、SDGs目標12の実現に関わるすべてのステークホルダーが、これらのターゲットを意識し、具体的な行動を起こすことが求められています。

具体的なターゲットは下記のとおりです。企業の事業に取り入れられそうなものはないかチェックしてみましょう。

12.1開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する 10 年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
12.22030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.32030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、 収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
12.42020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.52030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.82030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフ スタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境 への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
出典:公益財団法人日本ユニセフ協会

目標12が掲げられた背景

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」が掲げられた背景としてまず考えられるのが、地球資源の枯渇です。

人類の生産や消費活動が地球に与える負荷は増加し続けており、特にエネルギーや水、食料などの資源に大きな課題があるとされています。

たとえば、生活に欠かせない電力を生み出すためには、石炭や石油、天然ガスなどの資源が必要です。しかし、世界全体のエネルギー使用量は増えているにも関わらずエネルギー資源は減少し続けています。

資源を掘り出す技術がないまま利用し続けた場合、天然ガスや石油は約50年、石炭やウランは約130年で底を尽きるとされています。

限られた資源をどのように使うかはもちろん、資源の採掘や使用に伴う環境破壊問題も同時に考えていく必要があるでしょう。

また、食品ロスも大きな課題のひとつと言えます。
開発途上国などで食料不足や貧困が危惧されている一方、世界の食品生産量の3分の1は廃棄されているのが現状です。

生産や廃棄にかかるエネルギー消費もより深刻になっており、解決に向けた取り組みは急務となっています。

人間が自然環境へ与える負荷を測定した「エコロジカル・フットプリント」

エコロジカル・フットプリントとは、人間が自然環境へ与える負荷を測定する指標のことです。

「人間が生産・消費している資源量」と「地球が創出する資源量」を数値化して比較することで、人間の環境負荷をどれだけの地球面積でまかなえるかを測ることができます。

エコロジカル・フットプリントの単位は、面積(ヘクタール)で表示され、下記の計算方法で求めます。

エコロジカルフットプリント=人口×1人あたりの消費×生産・廃棄効率

エコロジカル・フットプリントの数値は先進国に高い傾向にあり、日本は世界で38番目に大きい数値となっています。

世界のエコロジカル・フットプリントは年々増加しており、このまま人類が生活を続けると、約1.7個分の地球が必要であるというデータも算出されています。

エコロジカル・フットプリントの数値を通し、持続可能な社会を実現するための具体的な取り組みを推進していくことが重要です。

地球資源に対する日本の現状と課題

世界中で課題となっている地球資源ですが、日本ではどのような現状になっているのでしょうか?

日本国内のエコロジカル・フットプリントの数値は2000年頃から減少傾向にありますが、依然として多くの課題を残しています。

ここでは「食品ロス」「水質・土壌汚染」「エネルギー消費の増大」という3つの視点から、日本の地球資源に対する現状と課題について確認していきましょう。

食品ロス

食品ロスは世界中で深刻になっており、日本も例外ではありません。

農林水産省によると、日本では毎年約600tもの食品ロスが発生しているとされています。

食品ロスの発生原因は、生産・流通段階での加工過剰や賞味期限切れ、流通・小売段階での在庫過剰や外観基準による不買など多岐にわたります。家庭における調理過剰や食べ残しなども原因と考えられるでしょう。

また、食料を廃棄物として処理する場合には多大なエネルギーを消費することになり、食品に関連した温室効果ガスの排出も自然環境悪化に影響を及ぼしています。

食品ロスは、単純に食料を無駄にしているだけでなく、限られた天然資源を余分に消費しているという課題も持ち合わせているのです。

このような食品ロスを削減するためには、生産者から消費者までが協働し、効率的なサプライチェーンを築くことが重要です。現代の大量生産・大量消費を見直し、ステークホルダーが一丸となって取り組んでいくことが求められるでしょう。

水質・土壌汚染

水質・土壌の汚染は、工場や農場での生産活動によって排出される有害物質が原因で引き起こされています。現在では産業排水に厳しい規定が設けられていますが、世界規模で見れば未だ深刻な状況にあるのも事実です。

日本では水道インフラが整備されているため、生活をしている中で水資源に困ることは少ないかもしれません。しかし、世界の水資源には限りがあり、各地で水資源の枯渇や水質悪化などの危機が懸念されています。

国連によると、現在の生産・消費パターンが続けば、2030年までに水供給の40%が不足すると予測されています。基本的に、貴重な水資源である淡水は自然の力によって浄化されていますが、現状では再生スピードに追いつかないほど水質汚染が進んでしまっているのです。

また、土地の再開発が推進されていることにより、土壌汚染の問題も深刻化しています。工事などで発生した揮発性有機化合物は土壌の深くに浸透し、地下水にまで拡散。最終的に、農作物や生態系に悪影響を及ぼす可能性もあります。

このような水質・土壌汚染問題の解決の具体的な目標となるのが、「つくる責任 つかう責任」です。廃棄物や化学物質の管理を行うことで、水質や土壌に対する負荷を減らすよう促しています。

エネルギー消費の増大

現状日本では、製造業を中心に省エネ化が進んだことにより、エネルギー消費を抑制しながら経済成長を果たすことができています。

経済産業省の資源エネルギー庁によると、2005年度をピークに最終エネルギー消費は減少傾向にあり、2020年度の最終エネルギー消費は前年度比6.7%減というデータがでています。

しかし、世界に目を向けてみると、1965年以降は平均2.5%程度で総エネルギー消費量が増加しているのが現状です。増加しているエネルギー需要に対する資源開発が追いついておらず、将来的な枯渇の危機に瀕しています。

日本では、消費エネルギーの約90%を、海外輸入される石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料に依存しているのが課題となっています。国際情勢によっては安定的にエネルギー源を確保できない可能性もあるため、再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進など、エネルギー政策の見直しや取り組みが必要となるでしょう。

参考:「令和3年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2022)/経済産業省 資源エネルギー庁

「つくる責任 つかう責任」を果たすために企業ができること

世界で注目されているSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」ですが、企業が取り組める内容にはどのようなものが挙げられるのでしょうか?

一見難しそうに見えますが、他の企業やNPOとの協業で目標を実現することは十分可能です。実際の企業の取り組み事例も併せてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

カーボンオフセットに向けた取り組み

企業が「つくる責任 つかう責任」を果たすためには、自社の温室効果ガス排出量を削減する取り組みに加え、カーボンオフセットによって削減量を補うことも重要です。

取り組み方法としては、排出削減・吸収量(クレジット)の購入温室効果ガスを削減するプロジェクト支援などが挙げられます。温室効果ガスの排出をゼロにすることはできませんが、排出削減のための投資を促進し、地球温暖化防止に貢献することができます。

カーボンオフセットでは、企業が自己責任で取り組むことが求められており、国際的に認められた基準に則って取り組むことが大切です。

水質汚染、エネルギー消費削減に向けた取り組み

水質汚染やエネルギー消費削減に関しては、実際の企業の取り組み事例を確認してみましょう。

株式会社オープンアップグループでは、気候変動への対応の一環として、環境負荷の少ない事業活動を実施しています。

特に、特例子会社であるビーネックスウィズが展開する「フラワーアレンジメント事業」と「ステーショナリー事業」は、グループ全体のSDGs活動をけん引している事業です。

たとえば、2016年から開始されたフラワーアレンジメント事業では、手間をかけずにきれいさを保てるアーティフィシャルフラワー(造花)を採用しました。

アーティシャルフラワーは生花に比べ、生産時に使用するエネルギーや廃棄時に発生するメタンガスの放出量を削減できるのが特徴です。水などが必要ないためメンテナンス性にも優れており、環境にも経済にも優しい取り組みのひとつと言えるでしょう。

カレンダーや販促品などを再生紙で手作りするステーショナリー事業では、大量の紙を廃棄しなければならないという課題に着目。紙製品の原材料として古紙を使用するプロセスを構築し、再生紙の配合を見直した新たな製造ラインを稼働させています。

それだけでなく、製作過程で使用した水については、ろ過処理をすることにより、一日の水使用量を約320リットル、月間の使用量を約6,500リットル程度に抑えることに成功にしています。

このような水質汚染やエネルギーに関する取り組みは社外でも高く評価され、同社は2021年9月に「さがみはらSDGsパートナー」、2022年5月に「かながわSDGsパートナー」に認定されました。

今後はグループ各社や他企業との協業も予想されており、「つくる責任 つかう責任」を果たしている好例と考えられるでしょう。

食品ロス削減に向けた取り組み

自社だけでは取り組みが難しい食品ロスも、NPOとの協業で大きく抑えられた事例があります。

日本の総合設備会社である株式会社竹村コーポレーションは、NPO法人 日本もったいない食品センターに寄付をすることによって、食品ロスに貢献しています。

日本もったいない食品センターは、食品ロスの削減に取り組む特定非営利活動法人です。食品メーカーやスーパーマーケット、レストランなどから寄贈された食品を、被災地や子ども食堂などに届けています。

竹村コーポレーションは、このNPO法人に寄付金を支出することで、通常廃棄されるはずの食品を困窮家庭へ届けることを可能にしました。

実際に食品関連の事業を展開しているわけではありませんが、「寄付」という形で、間接的に食品ロスへ貢献した事例となっています。

自治体、民間企業、NPOの三者協働は、「つくる責任 つかう責任」を果たすための重要な体制として、今後も注目していく必要があるでしょう。

参考:活動レポート「寄付金によって、通常より100世帯多くの困窮家庭へ食品を届けられました」

「つくる責任 つかう責任」への取り組みで信頼される企業へ

今回の記事では、持続可能な社会の実現に向けて重要なSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」について解説しました。

「つくる責任 つかう責任」は、企業が環境問題や社会問題に配慮したビジネスモデルを構築するために重要な指標です。

NPO法人や自治体との協業で取り組みやすくなる場合もあるため、サステナビリティ経営を推進している企業は、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。

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