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サステナビリティレポートとは?CSRレポートとの違いや事例を解説

サステナビリティレポートとは?

近年、多くの企業で“サステナビリティ”に関する取り組みが推進されています。そのなかでも重要度が高まっているのが、ESG投資の指標ともなる“サステナビリティレポート”です。

今回は、サステナビリティレポートの役割やCSRレポートとの違いにいて解説します。作成ステップや成功事例もご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

サステナビリティ委員会

サステナビリティレポートとは 

サステナビリティレポートとは、「持続可能な社会の実現に向けた企業の取り組みを開示する報告書」のことです。

地球温暖化や貧富の差など社会が直面している課題に対して、企業がどのように向き合っているかを周知するためにまとめられています。

基本的には、GRIスタンダードなどのガイドラインに沿って情報を開示しますが、内容は企業によってさまざまです。

まずは、このサステナビリティレポートの役割や統合報告書・CSRレポートとの違いを解説していきます。

サステナビリティレポートの役割

サステナビリティレポートは決算報告書などとは異なり、企業が発行する義務はありません。

しかし、サステナビリティレポートを作成することで、社会課題に対する自社の取り組みをアピールし、企業イメージを向上させるという役割があります。

また、今後企業が目指す姿を周知する機会となるため、投資家やステークホルダーとの関係をより強固にできるでしょう。言い換えれば、企業は社会課題を踏まえたうえで、適切な情報を開示する必要があるということです。

近年でこそ耳にする機会が増えた「サステナビリティレポート」ですが、日本で発行され始めたのは2000年代頃からだと言われています。2003年はCSR元年ともいわれ、企業の社会的責任が強化されるようになった時代です。

「経済成長だけを求めるのではなく、環境問題や社会問題を解決しながら持続的に発展する必要がある」という新たな考え方が普及され始め、日本企業にも社会や環境に対する責任の開示が迫られるようになりました。

CSRレポートとの違い

サステナビリティレポートと混同されやすい言葉に「CSRレポート」があります。どちらも「社会課題や環境問題に対する取り組みの報告書」を指しますが、その視点の在り方に大きな違いがあります。

サステナビリティレポートは、持続可能な社会の実現に向けて企業の取り組み内容をまとめた報告書のことです。

一方CSRレポートは、企業が、自社のビジネスを通じてどのような社会的責任を果たしているのかをまとめた報告書のことを指します。

つまり、サステナビリティレポートは社会から見た企業の取り組みを報告するのに対し、CSRレポートは自社からの視点で取り組み内容を報告すると考えておきましょう。

統合報告書との違い

同様に、サステナビリティレポートとよく似ているのが「統合報告書」です。

統合報告書とは、開示が求められている財務情報に加え、企業独自の強みである知的資産をまとめ、今後の事業展開や見通しをまとめた報告書を指します。

主に投資家に読まれることを想定しており、投資判断を促すために作成するのが特徴です。

一方、サステナビリティレポートは、社会課題や環境問題に対する取り組みを記載した報告書で、主にステークホルダーやESG評価機関に向けて発行されます。

どちらも社会的な信用を得るために重要な報告書ですが、発信先や内容に大きな違いがあると認識してきましょう。

日本の企業では統合報告書を発行するのが一般的でしたが、近年ではESGに対する具体的な取り組みや意識の高さをアピールするため、サステナビリティレポートを同時に発行する企業が増加しています。

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サステナビリティレポート作成のメリット・デメリット

企業で注目されつつあるサステナビリティレポートには、企業価値の向上などさまざまなメリットがあります。しかし、人手不足といったデメリットがあるのもまた事実。

ここからは、サステナビリティレポートのメリットやデメリットについて深堀りしていきましょう。

メリット

サステナビリティレポートを作成することで、下記のようなメリットを得られます。

  • ESGへの取り組みをアピールできる
  • ステークホルダーとの関係を強固にできる

それぞれ詳しく解説します。

ESGへの取り組みをアピールできる

まず、メリットとして「ESGへの取り組みをアピールできる」という点があげられます。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉で、近年ではこれらを意識した事業を展開する企業に投資する「ESG投資」が加速しています。

サステナビリティレポートを作成することで、自社のESGに対する取り組みを具体的に伝えることが可能です。投資家からの資金調達を目的としている企業にとっては、非常に有効なアピール材料となるでしょう。

企業が推進している社会や環境課題に対する取り組みは、投資家だけでなく従業員や学生にとっても興味の対象となります。現代では、企業のサステナビリティ活動に価値を置いている人も増加しているため、サステナビリティレポートを作成することで、企業としての社会的信頼を獲得できるかもしれません。

ステークホルダーとの関係を強固にできる

また、ステークホルダーとの関係を強固にできるのも大きなメリットです。基本的に、企業がサステナビリティ活動を推進するためには、ステークホルダーとの協力が欠かせません。

サステナビリティレポートは、企業が目指している方向性を示す重要な材料となるため、コステークホルダーとの協力体制を強化できると考えられます。

デメリット

メリットの多いサステナビリティレポートですが、いざ作成しようとすると2つのデメリットに直面することもあるでしょう。

  • 社内での意識統制が難しい
  • 人手不足の企業ではコストがかかる

このようなデメリットも踏まえたうえで、サステナビリティレポート作成に取りかかることが重要です。

社内での意識統制が難しい

サステナビリティレポートの作成は、もちろんメリットだけではありません。まず大きな課題となるのが「サステナビリティレポートの必要性を社内に周知させることが難しい」ということです。

サステナビリティレポートは、経営層を含めた全社的な取り組みとして推進する必要があります。作成することでどれほどのメリットがあるのかを理解し、自社のESGに対する取り組みを正しく把握していなければ、サステナビリティレポートを発行することは困難でしょう。

人手不足の企業ではコストがかかる

また、人手が不足している企業にとっては、大きなコストがかかる可能性もあります。基本的に、サステナビリティレポートは専門チームを発足させ、部署横断で作業を進めていきます。人手に余裕のない中小企業などには難しく、専門チームを作ることによって一時的に業績が下がることもあり得るでしょう。

サステナビリティレポート作成のステップ 

多くの企業も作成しているサステナビリティレポートですが、実際にはどのような手順で進めれば良いのでしょうか。

ここからは、企業がサステナビリティレポートを作成するために必要な5つのステップをご紹介します。

誰に、何を伝えるかを決める

サステナビリティレポートを作成する前に、まずは「誰に向けて伝えるのか」を明確にしなければいけません。ESG評価機関や機関投資家、取引先企業など、メインとなる読者を決めていきましょう。

そのうえで、想定読者が求めている情報は何かを分析し、開示する内容を考えていきます。適切な情報を入れるためにも、自社の現状やステークホルダーの動向もきちんとチェックすることが重要です。

全体のスケジュールを立てる

続いて、作成から公開までの全体スケジュールを定めます。一般的に、レポートの作成には約6ヵ月程度かかるとされているため、中間地点(マイルストーン)を決めておくと良いでしょう。

サステナビリティレポートの内容によっては、収集すべき情報が多く、関係者への聞き取りが必要になるなど、想定以上の時間がかかる場合もあります。

作業を円滑に進めるために、日頃から社内の協力体制を築いておくことはもちろん、余裕の持ったスケジュールで進行することが大切です。

ガイドラインを参考に情報を集める

スケジュールを決めたら、次にガイドラインを参考にして情報を集めていきます。統合報告書ではIRフレームワークに沿って進行することが多いですが、同様にサステナビリティレポートにも何種類かのガイドラインが存在します。

多くの企業で使用されているのは、「GRIスタンダード」と呼ばれるガイドラインです。
企業のマネジメント手法の方針や経済・環境・社会に関する開示項目が定められています。

ほかにも、「TCFD」「ISO30414」「TNFD」などのガイドラインが存在しますが、基本的には「GRIスタンダード」に沿って構成を決めていくと良いでしょう。

ただし、ガイドラインはありますが、すべてに準拠する必要はありません。自社の事業内容や取り組み内容を積極的に記載し、投資家や関係者への企業アピールを盛り込むことがポイントです。

レポートを発行して公表する

サステナビリティレポートが完成したら、発行して社内外へと公表します。

発行するにあたって第三者保証を受けるかは企業の判断に委ねられますが、保証を取得することで情報開示に対する信頼性が高まり、投資家やステークホルダーからの評価の向上が期待できます。

また、サステナビリティレポートを発行する時期は定められていませんが、最も発行が多いのは株主総会が発行される6月頃。次いで、上半期の7~9月に多くなる傾向にあります。

多くの人の目に留まる時期に発行することで、自社の取り組みを効果的に周知できるでしょう。

社内外の反響をヒアリングする

発行後は、社内外からの反響をヒアリングすることも重要です。サステナビリティレポートを発行し「従業員の意識がどのように変化したか」「投資家からの評価はどうか」などを把握しておくことで、次回の作成に活かすことができます。

評価の高いサステナビリティレポート事例

最後に、企業が発行しているサステナビリティレポートの事例をお伝えします。どれも高い評価を獲得されている企業なので、ぜひ参考にしてください。

富士フィルム

日本の大手精密化学メーカーである「富士フィルム」。サステナビリティレポートでは、社会から求められている「ガバナンス」「環境的側面」「社会的側面」の3つの分野において、CSR活動の情報や定量情報を中心に記載しています。

企業のイノベーションや事業内容によって持続可能な社会を実現することを明記しており、2030年の在り方として、下記の「SVP2030」という指標を定めています。

  • 気候変動への対応
  • 資源循環の促進
  • 脱炭素社会の実現を目指したエネルギー問題への対応
  • 製品・化学物質の安全確保

同社では、この「SVP2030」に基づき、経済活動の中で生まれる社会・環境課題にどのように対応し、解決していくのかを盛り込んでいいます。企業としての考え方や方向性を示したうえで、持続可能な社会の実現に向けた事業の検討が記載されおり、企業としての将来像をイメージしやすくなっているのが特徴です。

中長期的なシナリオを描いていることで、顧客や投資家、ステークホルダーの関係者に伝わりやすいサステナビリティレポートとなっているでしょう。

参考:富士フイルムホールディングス「サステナビリティレポート」

ダイキン工業

空調や空気清浄機を展開する「ダイキン工業」も古くからCSR活動に取り組んでいます。同社のCSR活動では、企業と社会の持続的な発展に向け「環境」「新価値想像」「顧客満足」「人材」の4つのテーマを重視しているのが特徴です。

サステナビリティレポートでは、温室効果ガス実質ゼロを目指す「環境ビジョン2050」の達成に向け、施策を立案・実行する姿勢や考え方について触れられています。

また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け「空気を扱う会社として何ができるのか」を記載しているのもポイントです。空気清浄や換気への関心が高まった現在、世界中に安全・安心な空気を提供しながら、地球温暖化の影響を限りなく軽減することを明記しています。

目まぐるしく変化する社会情勢に合わせ、リスクと機会を的確に捉えながら事業を展開する姿勢は、投資家にとって重要な投資基準となっているでしょう。

参考:ダイキングループ「サステナビリティレポート2022」

KDDI

日本大手の通信事業者である「KDDI」では「命をつなぐ」「暮らしをつなぐ」「心をつなぐ」という3つのサステナビリティアクションを策定しています。

サステナビリティレポートの中では、地球環境の保全や地方・都市の持続的発展、多様性の尊重など、早急な対策を求められる社会課題の解決に向けた計画を事業戦略とともに掲載。

「DX」「金融」「エネルギー」「LX(ライフトランスフォーメーション)」「地域共創」から成るサテライトグロース戦略を推進し、社会の快適なインフラ整備を実現する旨を明記しています。

通信技術を通して、自社だけでなくさまざまな業界のビジネス創造をサポートし、最終的に人々の暮らしをトランスフォームするという、通信業界ならではの社会的責任を示せている事例となっています。

参考:KDDI「サステナビリティ統合レポート2022」

サステナビリティレポートの本質は自社の情報発信

今回の記事では、企業で注目されているサステナビリティレポートについて解説しました。

サステナビリティレポートの本質は「自社が持続可能な社会の実現に向けてどんな取り組みをしているのか、わかりやすくまとめて開示すること」にあります。形式にこだわらず、企業として自社の情報発信をしていくことが重要です。

企業価値を向上させるためにも欠かせない要素となるため、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。

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