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カーボンオフセットとは?企業のカーボンクレジット活用事例もご紹介

カーボンオフセットとは

深刻化しつつある地球温暖化は、ライフスタイルや企業のビジネス活動に大きな影響を与えています。そこで注目を集めているのが「カーボンオフセット」です。

今回は、カーボンオフセットの取り組み手順やオフセット方法のひとつである「カーボンクレジット」について解説します。企業の活用事例もご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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カーボンオフセットとは?

カーボンオフセットとは、日常生活や企業のビジネス活動で排出している二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスをできるだけ削減し、削減困難な温室効果ガスについては、他の場所で排出量を埋め合わせ(オフセット)するという考え方のことです。

埋め合わせの手段としては、排出削減・吸収量(クレジット)の購入温室効果ガスを削減するプロジェクトの支援などが挙げられます。

カーボンオフセットは、温室効果ガスの排出をゼロにすることはできませんが、排出削減のための投資を促進し、地球温暖化防止に貢献することができます。

イギリスを中心に欧州、米国などで取り組みが活発化しつつあり、日本でも民間企業での取り組みが広がるようになりました。

カーボンオフセットの取り組み手順

カーボンオフセットは、基本的に以下の手順で進めることが推奨されています。

  1. 自らの温室効果ガスの排出量を認識する

温室効果ガスの排出量や削減量は目に見えないため、まずは角度の高い方法で排出量を算定する必要があります。

  1. 主体的に温室効果ガスの削減努力を行う

自らが排出している温室効果ガスの量を把握できたら、その排出量自体を削減する方法を考えることが重要です。努力次第で排出量を減らせるのであれば、オフセット前に可能な限り削減しましょう。

  1. 削減が難しい量を把握し、埋め合わせ(オフセット)をする

削減努力をしたうえで、どうしても削減困難な温室効果ガスに関しては、排出量を把握し、他の場所で同じ量の温室効果ガスの埋め合わせをします。

この埋め合わせ方法については、次の段落で詳しく確認していきましょう。

オフセット方法の一つ「カーボンクレジット」とは

カーボンオフセットの方法としては、温室効果ガスを削減するプロジェクトに投資したり、再生可能エネルギーの活用を支援したりするという方法があります。

そのなかでも、多くの企業で導入されているのが「カーボンクレジット」という方法です。

カーボンクレジットは、温室効果ガスの排出・削減量を企業間で売買可能にする財務的な仕組みのことで、別名「炭素クレジット」と呼ばれることもあります。

カーボンクレジットを活用すれば、組織が生産した温室効果ガスの排出量を削減するために同等量のカーボンクレジットを購入し、実質的に自分の排出量を相殺することが可能です。

カーボンクレジットの仕組み

カーボンクレジットの取引方法には、「ベースライン&クレジット制度」と「キャップ&トレード制度」という2種類があります。

とても似ている制度ですが、取引の対象に違いがあるため、簡単に把握しておきましょう。

出典:経済産業省 カーボン・クレジット・レポート

ベースライン&クレジット制度は、温室効果ガスの「削減実績」を対象とした取引制度です。

たとえば、自社設備を省エネ性能の高い設備へ切り替えた場合、元々使用していた設備の見通し排出量と新しく導入した設備の排出量の差分をクレジットにすることができます。

一方、キャップ&トレード制度は、温室効果ガスの「排出枠」を対象にした取引制度です。温室効果ガスの排出削減が義務付けられている大規模事業者が、どうしても削減できない排出量(排出枠)を他社クレジットとして購入することができます。

東京都が2010年に国内で初めて導入した制度で、温室効果ガスの排出規制を受けた企業にとって役立つ仕組みとなっているのが特徴です。

J-クレジット

Jクレジットとは、再生可能エネルギーや省エネ設備の導入などによるCO2の削減量や森林活動によるCO2の吸収量を「国」が認証する制度のことです。

Jクレジット制度では、企業や団体が削減・吸収したCO2の情報を国へ申請し、国の認定を受けた場合に、Jクレジットとして発行されます。発行されたJクレジットは、他の企業や個人などに対して販売可能です。

国が運営する制度のため信頼度が高く、このクレジットを購入する事業者は「環境へ貢献している」として企業価値の向上が期待できるでしょう。

また、クレジットを売却した事業者にとっては、利益を他のカーボンセット事業に投資できるため、さらなるカーボンオフセットの活性化が見込めます。

カーボンクレジットにつながる事業の種類

カーボンクレジットについて解説してきましたが、具体的な事業としてはどのようなものが挙げられるのでしょうか。

ここからは、カーボンクレジットにつながる代表的な3つの事業をご紹介します。

省エネ設備の導入

多くの事業者で取り組まれているのが「省エネ設備の導入」です。その名の通り、エネルギー効率の高い設備を導入し、温室効果ガスの排出削減を図ることを指します。

たとえば、照明器具や空調設備などのエネルギー消費が大きい設備を省エネ型のものに置き換えることで、電力の使用量を削減し、温室効果ガスの排出を抑えることが可能です。

この事業では、まず設備のエネルギー効率を評価し、導入する設備の種類や規模、導入にかかる費用や期間などを検討します。そして、導入後に温室効果ガスの排出量を計測し、排出削減量に対応するカーボンクレジットが発行されるという仕組みです。

省エネ設備の導入によって、長期的なランニングコストの削減につながると同時に、環境保護という社会的責任を果たすことができます。

再生可能エネルギーの導入

化石燃料に代わる再生可能なエネルギー源を導入することで、温室効果ガスの排出削減を図るという方法もあります。再生エネルギーとは、風力や太陽光、水力、バイオマス、地熱などの自然エネルギーのことであり、これらのエネルギー源を利用して発電を行います。

この事業では、まず再生エネルギー発電設備の導入に必要な投資額や発電量などを検討し、適切な設備を導入します。その後、再生エネルギー発電による発電量と化石燃料発電による発電量の差から排出削減量を計算し、その量に対応してカーボンクレジットが発行される仕組みです。

再生エネルギーを導入することにより、企業や施設はエネルギーの自給自足を目指すことができ、エネルギーコストの安定化につながるでしょう。

ただし、再生エネルギーに関しては、設備の購入や設置費用などの導入コストが高くなる可能性があります。設備を設置するためのスペースが必要になる場合もあるため、メリットとデメリットを比較して導入を判断することが重要です。

森林保全

森林保全をすることで、森林由来クレジットを発行できることもあります。森林由来クレジットとは、森林を適切に保全・再生することによって森林に吸収された二酸化炭素の量を、クレジットとして国が認証したものです。

特に林業やパルプ業など、木材と密接にかかわる企業は、森林由来クレジットを活用することで持続可能な事業に取り組むことができるでしょう。

また、他の業種にとっても、林業にかかわる企業や森林保全にかかわるNPOと協業すれば、比較的取り組みやすい事業だと言えます。

カーボンクレジットを活用すると良い企業は?

カーボンクレジットを活用すべき企業として挙げられるのは、交通・運送業製造業など、CO2の排出量が他の業種より多い企業です。

たとえば、石炭を原料として鉄を生産する鉄鋼業は、製造過程で多くのCO2を排出しています。大規模な工場を擁し、電気使用量も多い傾向にあることから、CO2排出量が多いのもいたし方ありません。

また、輸送に化石燃料を使用する航空・運送業なども、どうしてもCO2の排出量が多くなります。

このように温室効果ガスの排出量の削減が根本的に難しい業種の企業は、カーボンクレジットを購入することで、排出量削減への貢献をアピールできるのです。

カーボンクレジット活用のメリット

日本では2050年のカーボンニュートラル実現に向け、社会全体での温室効果ガス排出量の削減が求められるようになりました。企業にとっては、この削減に取り組むことが社会的責任とされるようになり、対応が迫られています。

ここからは、カーボンクレジットを活用することで得られるメリットについて深堀りしていきましょう。

グリーンイメージの向上につながる

カーボンクレジットの発行・購入を行うことで、企業が環境に配慮しているという「グリーンイメージ」を向上させることができます。

「環境への配慮」が投資家や消費者からの評価基準となっている現代、環境に対する取り組みをアピールできることは大きなメリットにつながるでしょう。

たとえば、環境に配慮している企業としてアピールできれば、顧客は信頼を寄せ、購買意欲を高められるかもしれません。グリーンイメージの高い企業はブランド価値が高まる傾向にあるため、顧客や投資家などのステークホルダーからの信頼獲得にもつながります。

このように、カーボンクレジット制度は社会や環境への貢献としてはもちろん、企業価値を向上させるという意味でも役立つ制度だと考えられます。

脱炭素への貢献がしやすい

温室効果ガスの排出が難しい業種にとっては、カーボンクレジットを活用することで脱炭素へ貢献しやすいというのもメリットです。

先程もお伝えしたように、鉄鋼業や運送業などでは、技術開発が進んでいる中でも、大幅なCO2削減を実施することは難しい傾向にあります。脱炭素経営にシフトしようにも、簡単には進められないでしょう。

そんな場合にカーボンクレジットを活用すれば、自社のCO2排出削減量を増加させることができ、脱炭素への貢献を比較的簡単にアピールできます。

生産設備や製造ラインの特性上、CO2の削減が難しいという企業は、カーボンクレジットを活用してみるのがおすすめです。

設備投資が不要

企業が脱炭素経営へシフトするには多額の投資が必要となりますが、カーボンクレジットでは、設備投資を実施する必要がありません。
基本的に、カーボンクレジットを活用すれば、他の企業が行ったCO2削減の成果を購入することができるため、大幅な費用負担は避けることができます。

また、自社で設備投資を行う場合は、投資の効果が現れるまでに時間がかかることがありますが、カーボンクレジットを活用することで、比較的短期間でCO2削減の成果を得ることが可能です。

さらに、カーボンクレジット市場では、CO2削減量に応じて価格が決まるため、自社の予算に合わせて購入量を調整できるのもポイントと言えるでしょう。

企業のカーボンクレジット活用事例

最後に、企業が実施しているカーボンクレジットの活用事例をお伝えします。創出例と購入例に分けてご紹介しているので、活用を考えている方はぜひ参考にしてください。

カーボンクレジットの創出例

まずは、カーボンクレジットを創出している企業の事例を確認していきましょう。

田島山業株式会社

大分県日田地方を中心に林業を営む「田島山業株式会社」。約1,200haの森を所有・管理しており、『みんなの森プロジェクト』と呼ばれる森林保護活動を実施しています。

森に訪れ、森を楽しむ人々と共に森を守るプロジェクトで、林業を6次産業化にしていくという取り組みです。

森林は、CO2排出量をオフセットできる貴重な資源がある場所ですが、その管理に携わる林業は赤字経営となるのが前提となってしまっています。
このような現状を変え、全国各地持続可能な林業を営むために、本プロジェクトをスタートさせました。

『みんなの森プロジェクト』では、田島産業の森づくりに共感した企業・個人に向けて森林由来のJクレジットを創出しており、協業パートナーと共に脱炭素実現を目指しています。

NPO法人ちがさき自然エネルギーネットワーク

神奈川県茅ヶ崎市と協業で事業を運営している「NPO法人ちがさき自然エネルギーネットワーク」。
自然エネルギーや省エネルギーの普及啓発に関する事業を実施しており、地域のエネルギー問題の解決に向けてさまざまな取り組みを行っています。

カーボンクレジットの創出も取り組みのひとつで、各家庭で自家消費された太陽光発電のCO2排出削減量をまとめ、Jクレジットを創出しています。

認証されたクレジットは、地元企業の事業活動やイベントなどから排出されるCO2のカーボンオフセットに活用しており、売却益を事業者や参加者に還元しているのも特徴です。

今後も、地球温暖化対策の一環として取り組みを続けると表明しており、環境価値を地産地消している好事例だと言えるでしょう。

カーボンクレジットの購入例

続いて、カーボンクレジットの購入例をご紹介します。

長野県、信濃毎日新聞株式会社

長野県一帯を発行エリアとする「信濃毎日新聞株式会社」。長野県と協業で実施している

「第59回長野県縦断駅伝競走」の開催に伴う事前協議やパンフレット、紙類の印刷準備、運営当日の移動などで排出される温室効果ガスのカーボンオフセットを実施しています。

ただ実施するだけでなく、長野県全域に対するカーボンオフセットの周知やCO2の削減活動に関する広報活動を行っており、県民に対する普及活動を目的としているのが特徴です。

株式会社管野組

北海道を中心に土木工事業を営む「株式会社管野組」。
地球温暖化対策の一環として、省エネ活動の徹底やペーパーレス化、アイドリングストップなど幅広い環境経営活動に取り組んでいます。

カーボンオフセット活動としては、同じく北海道の遠軽町が運営している交流促進施設「やまびこ」で創出されたJクレジットを購入し、2021年の道路工事施工時に排出されるCO2の一部を相殺させています。

クレジットの売却代金は、町内の温暖化対策や地域活性化事業に活用されており、同じ町内同士でCO2を相殺している地産地消の好例のひとつです。

カーボンクレジットの導入で持続可能な事業者へ

今回の記事では、企業のビジネス活動で重視されているカーボンオフセット・カーボンクレジットについて解説しました。

カーボンクレジットは、企業が環境に配慮した経営を行うための手段のひとつです。気候変動に対する社会的意識が高まっている今、企業の環境に対する責任も増加していくと考えられます。

設備投資も少なく比較的取り組みやすい手段であるため、環境経営へのシフトを考えている企業は、ぜひ一度導入してみてはいかがでしょうか。


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