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フードバンクへの食品寄付の先駆け・ニチレイフーズに聞く——食品ロス削減への取り組み

株式会社ニチレイフーズは、全社員が自分の担当領域を超えて自発的に取り組む「ハミダス活動」を推進しています。

その活動の一つが、食品ロス削減のためのフードバンクなどへの食品寄付。

同社は、2005年から日本初のフードバンク団体「セカンドハーベスト・ジャパン」と連携し、現在ではさまざまな団体へ食品寄付を行っています。

今回は、連携団体の選定理由や連携体制、食品ロス削減に向けた展望などについて、ハミダス推進部長の吉野達也さんと、サステナビリティ推進部長の佐藤友信さん、広報グループの原山高輝さんにお話を伺いました。

フードバンクへの食品寄付の先駆け

——フードバンクに寄付されるようになったきっかけを教えてください。

原山高輝さん(以下、原山):アメリカでの駐在経験のある弊社社員が、アメリカで普及していたフードバンクの活動に共感し、日本に戻ってきた際に弊社でも取り組みたいと考えたことがきっかけです。

提携先を模索していたところ、人づてで日本初のフードバンク団体「セカンドハーベスト・ジャパン」(以下、セカンドハーベスト)代表のマクジルトン・チャールズさんをご紹介いただき、食品メーカーの中でもいち早く、2005年から取り組み始めました。

——セカンドハーベストの設立が2002年なので、2005年の参入ということはフードバンクを一緒に広めていった企業ということですね。

吉野達也さん(以下、吉野):そうですね。セカンドハーベストの代表の方からも「ニチレイフーズさんがフードバンクに参加してくださってから、他の企業から『ニチレイさんもやっているんですね』という反応をもらうようになり、物資が集まるようになりました」と感謝していただいたことがあります。

——フードバンクにはどのような食品を寄付しているのでしょうか。

吉野:弊社で出るブロークン(*1)を寄付しています。

以前はブロークンを新しい箱を入れ替えて販売していたこともありましたが、作業が追いつかず、どうしても捨てざるを得ないものが多くありました。
箱が少し潰れただけで正規品として売れなくなってしまいますが、中身や賞味期限はまったく問題ないので、非常にもったいないと感じていました。

*1: 箱の中の商品は問題がないのに箱が少し傷ついただけで販売できなくなり、最終的に破棄される商品のこと。

NPOとの連携の決め手は、安心感と物流のマッチ

——現在フードバンク団体は数多く存在しますが、セカンドハーベストさんと連携されている理由を教えてください。

佐藤友信さん(以下、佐藤):以前、廃棄予定の食品が無断転売されていた問題がありました。

フードバンクでも同様のケースが起きる可能性があるので、私たちは食品を寄付して終わりというわけにはいきません。廃棄処理するのであれば弊社社員が確認する必要がありますし、横流し防止のために契約締結なども入念にする必要がありました。

セカンドハーベストさんは、初期の頃から契約締結などもしっかりされていて安心感がありました。また、弊社は冷凍食品の寄付が多いのですが、冷凍の物流がうまくマッチしたことも大きいと思います。

——冷凍食品の物流体制はどのように作っていきましたか。

佐藤:冷凍食品は凍らせたまま運搬しなければいけないので、寄付が難しい側面があります。
それを弊社のグループ会社であり低温物流を得意とするニチレイロジグループと連携し、主に首都圏エリアの路線便に積載して、フードバンクの認定する養護施設などに運送できる仕組みを作りました。

——寄付などにかかる費用はどのように捻出されていますか。

吉野:寄付する商品は廃棄されるはずだったものなので費用は掛からないのですが、通常であれば物流費が掛かります。
そこで弊社では、ニチレイロジグループの路線便への相乗りや、子ども食堂の方に弊社工場に引き取りに来てもらうという方法で物流費をかけずに運営しています。

継続的に寄付できるように、できるだけお金が掛からない仕組みにしています。

コロナ禍を経て、食品寄付の輪がさらに広がる

——近年はセカンドハーベストさん以外の団体とも連携されているんですね。

佐藤:そうですね。数年前からは、クラダシさんを通してフードバンク団体に寄付したり、子ども食堂にも寄付しており、活動が広がっています。

また、コロナ禍で需要が増えたこともあり、2021年からはセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンさんと連携して、夏休みと冬休みの年2回、経済的に困難な状況に置かれた家庭を対象に「子どもの食 応援ボックス」を他食品メーカーと合同で提供しています。

弊社からは工場で余った常温のレトルト商品を提供しており、各回首都圏や関西圏の3,200世帯にお送りしています。

——食品寄付をされる中で、企業として予期せぬ効果があったことはありますか。

吉野:フードバンクや子ども食堂への食品提供はもともと廃棄されていたものを有効活用して社会に貢献できたらという考えでやっており、営利目的ではありませんが、フードバンクを通じて弊社を知っていただき、レトルトカレーを購入したいという問い合わせが来たことがあります。

フードバンクへの食品寄付が企業や商品の認知につながっていると実感した出来事でした。

——今後、食品ロス削減のために新たに取り組みたい活動はありますか。

吉野:フードバンクへの寄付を通じて、新たな課題や気づきもありました。

例えば、新たに冷凍食品を活用したいとお申し出いただいても、そもそも冷凍庫がなく活用できない問題もあります。そこで現在、冷凍ストッカーメーカーさんと共同で、冷凍食品と一緒に冷凍ストッカーも子ども食堂に寄付して使ってもらう活動を模索しています。

フードバンク支援についても、私たちのハミダス活動に終わりはありません。

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インタビュー:平野美裕、川添克彰
文・編集:平野美裕