三木プーリ株式会社(本社:神奈川県川崎市)は、『米沢へ送ろう、わたしたちのありがとう。』をテーマに実施したわくわく寄付コンペに引き続き、『街と私たちとのサステナブル化』と題して、同社のヘッドクォーターが位置する神奈川県座間市を中心に社会課題の解決に取り組む団体の支援に取り組んでいます。
2回目となる今回、従業員投票で寄付先として選ばれたのは、地域の防災・減災に取り組む特定非営利活動法人 ざま災害ボランティアネットワーク。2008年7月に市内で防災活動に取り組んでいた有志が集まって設立された任意団体で、「東日本大震災」をきっかけに座間市、並びに座間市社会福祉協議会などとの協働事業が進みました。
両者は「寄付だけの関係にとどまらず、継続的な対話を大事にしたい」という想いのもと、 同法人代表理事の濱田政宏さんと、三木プーリのわくわく寄付コンペ委員会(参加者5名)とでリモート対談を実施しました。
三木プーリの委員会メンバーにとっても、企業のBCP対応を見直すきっかけや、災害時に企業が地域に貢献できることを見つける機会となり、今後の連携にも期待が膨らむ素敵な対談でした。
目次
寄付先団体をもっと知るために
座間市と協働して、近づく災害から市民の生命と財産を守る
ーーご活動に関して直近のアップデートがあればお話いただけますか。
濱田さん:座間市長が小松原に住んでおり、私も三木プーリさんの前は時々通るので、機械を作っている会社だということは存じ上げておりました。
私たちの主たる活動はワークショップです。付箋を貼り合いながら、災害をどう乗り越えていくかについて意見を出し合う形で行っているので、コロナ禍の近年は、密を避けるという意味で、ほとんど事業ができませんでした。
最近は地震が多いので、市の職員に対して避難所開設などの訓練も実施しています。先日は夕方16時から19時くらいまで、冬の中での避難所を体験してもらいました。
来期は座間市の協働事業費も若干ではありますが増やしていただいたので、近づく災害から市民の生命と財産を守ること、そしてそのサポートを私たちが担っていきたいと思っています。
寄付金はトルコ・シリア地震への寄付と「まちなか防災塾」の運営費に
ーー続いて、寄付金を具体的にどのように使われるのかについてお話いただけますか。
濱田さん:寄付金40万円につきましては、早速運営委員会を開きまして、いくばくかトルコ・シリア地震の復興支援のために寄付をさせていただく予定です。私どもは長らく被災地支援をやってきていますが、特に今回は凄まじい地震ということもあってまったく国として対応ができていない状況なので、寄付金の中からその支援に使わせていただきたいと思っています。
また、自主事業として『まちなか防災塾』というものをやっており、今回いただいたお金はこの運営費にも使わせていただこうと思っています。
相武台前駅近くの建物内に、NPO法人きづきが作った「コミ・カフェ リンクス(COMMU-CAFE LINKS)」という就労継続支援B型事業所があります。そこでは就労や生産活動などの機会を提供しており、私どもはそこで『本気防災・そなえ亭』という、地域災害の知見を広めていくためのさまざまな防災イベントを展開しています。
ーーありがとうございます。三木プーリの皆様から今のお話に関してご質問やコメントがありましたらお願いします。
高萩さん:トルコ・シリア地震への寄付は何か物資を送るという形ですか。
濱田さん:物資を被災地に送ると現地に負担がかかるので、共同募金会を通じてお金を送ろうと思っています。
高萩さん:わかりました。ありがとうございます。
Q&Aセッション
BCPの難しい勉強をしなくても、まずは生き残ることが大事
高萩さん:私自身総務部でBCPの仕事にも携わっており、ざま災害ボランティアネットワークさんが取り組まれていることにとても共感が持てます。私もBCPについてこの2年間ぐらい勉強し始めたんですが、災害の知識はどういうところで得られていますか。
濱田さん:福島県沖地震ではトヨタ自動車の取引先が被災し、部品が欠品したことで車が出荷できない事態が現実にありました。
御社のホームページを拝見しますと、世界各地に工場が分散されているので、災害時のロジックスティックがどういうふうになるのかということまで考えると、BCPを練るのは大変だと思います。
私どもはそういう問題に対して専門の先生をご紹介することはできますが、まずは皆様自身が生きることが大事なんですね。企業のBCPやマニュアルを見ると、従業員が生きていることが前提になっています。ひょっとしたら死んじゃうかもしれないわけですね。どういうふうにバトンタッチしていき、生き残るためには何をしたらいいのかを考える必要があります。
最近、国は「自助」と言い出していますが、私どもはまず市民の災害に対する考え方をきちんと身につけさせようということでこの団体を運営しています。
BCPに活用できそうな講座やワークショップをいくつかご紹介します。
①『災害ボランティア養成講座』
私たちの上部団体である公益社団法人SL災害ボランティアネットワークという団体が主催しています。“SL”というのは“Safety Leader”の略称で、阪神淡路大震災の際に災害ボランティアをきちんと備えておかないと、災害が来たときにどうにもならなくなるという反省から設立されました。
②座間市との連携講座
毎年2月と8月に座間市の消防施設を使った3日間の研修があります。市民として災害時に何が必要なのかというワークショップから始まり、人工心肺蘇生や技能、煙の中や高所からの避難方法などの体験学習を行います。
その中には私が担当している「災害後の3・3・3」という、災害発生後3分間、3時間、3日間で何をすべきかをグループで話し合い、一つのタイムテーブルを作るワークショップがあります。これの延長上にあるのがいわゆるBCPなので、入門編として勉強してもらうと良いと思います。
それを受講いただいた後、座間市であれば災害ボランティアネットワークに加入していただいて、座間市民や学校などに対して出張授業や出前授業という形で活動をしながら、自分自身も学びを深めていくことができます。
③災害図上訓練『DIG(ディグ)』
県域では神奈川県の高等学校の先生方に提供している『DIG(ディグ)』という災害図上訓練があります。
例えば三木プーリさんであれば、工場の敷地の図面を書いて、どこに消火器や機械があるかを書き足し、それらを災害時にどういうふうに守っていくのかを、担当者同士で付箋を貼りながら話し合い、それらを整理してマニュアルを作るというような形です。
BCPマニュアルは外注ではできないんです。自分たちがやらなきゃならないことなので、一つの入り口としてこういった機会を活用していただければと思っています。
④『シェイクアウト』
最後は、三木プーリさんも参加されている『シェイクアウト』です。これは11年前に私たちが提案して導入した防災行動訓練で、指定日時に、参加者がそれぞれの場所で自身の身を守るために、市内で一斉に行っています。
直近では今年1月23日の午前11時に、市内の幼稚園・保育園、小中高、養護学校にいる全員が一斉に机の下に1分間潜りました。
シェイクアウトの参加者は直近4年間の平均で53,000人ぐらいで、座間市の昼間人口が約10万人なので、約53%が参加していることになります。
座間市は今年で11回目で、全国でこれほど続いているところはありません。他府県もこれに影響を受け、神奈川県の黒岩知事は座間市を参考にして『かながわシェイクアウト』を始めました。
私たち災害ボランティアネットワークが座間市と一緒に行っていることで、行政が手が抜けない状態を作れていると思っています。このような観点から、座間は素晴らしい街になっており、“防災のまち”だと言われるまでになりました。
私たちの活動は「できることをできるときにできるだけ」と掲げています。そんなに難しいことを勉強しなくても、まずは災害時に生き残ることが大事。ぜひこういった講座を利用していただければと思いますが、いかがでしょうか。
高萩さん:ありがとうございます。たくさん教えていただきました。そのような講座を調べて受講してみようと思いました。
やはりまずはどうやって生き残るかというところですね。確かに私も生きることが前提でBCPを作っていたので、最悪の状況になったときを考えていかなければいけないと感じました。
あらゆる面から備えることの大切さ
栗田さん:先ほどのお話でコミュニティカフェや研修といったような形で、防災に関する知識を得たり経験値を積んだりする場があることを知ったのですが、例えば防災訓練や災害発生時に民間企業と連携して対応することはありますか。
濱田さん:私どもの本来の目的は、災害時に被災地の災害救援ボランティアセンターに入って、被災地外から来てくださるボランティアを受け付けて、現地の被害状況を見ながらボランティアとマッチングして、必要な人材を派遣することです。
ただ、災害はそう起きるものではないので、学校や自治会に行って講座などを実施することで防災を普及しています。実際に防災訓練を一緒にやっている企業は介護事業所ですね。市内にはいくつか介護事業所がありますので、ご依頼があると実際に出向いて、介護事業所のレイアウトや非常口を確認しながら訓練方法を提案します。
企業ではないですが、学校の避難訓練もやります。特に座間市には、駅の近くに養護学校がありますよね。重症の子どもたちがいるので、そこの養護学校の教職員に対して、学校における子どもたちへのケアと避難訓練を指導させていただいています。
それから地域では、体験型防災訓練を持ち回りでやっています。ところで、おうちで災害に遭うことを想定した場合、一番備えなければいけないことは何だと思いますか。
栗田さん:地震の場合だと、倒壊などでタンスの下敷きにならない、などでしょうか。
濱田さん:そうですね。耐震診断などにはお金がかかりますが、最低でもひと部屋は安全な場所を作ることが大事ですね。
また、備蓄品でいうと、皆さんはまず「食料、水が大事」って言うんですよ。しかし、私たちは「トイレが大事」と伝えています。地震でも家のトイレは壊れず水が出なくなるだけなので、便器を使って排泄ができるグッズを備えておくことが大事です。その次に大事なのが水、その次が食料です。
それから電気の自助という面では『マイ発電所プロジェクト』というのをやっています。小型の50W、100Wの太陽光パネルを使ってリチウム電池に蓄電をし、携帯やパソコンなどの最小限の電気を確保するワークショップもあります。
首都直下型地震の想定では、座間市あたりでも10日間は電気が通らないと言われています。
市内にはマンションがたくさんありますが、エレベーターの災害対応は首都圏のエレベーターが最優先されます。そうすると停電時の10日間は自助できる必要があります。私が住んでいる14階建てのマンションでは、国の助成をとって非常用発電機を1基設置しました。住民の総会に諮って、停電時でもエレベーター1基を動かせる備えを実現しました。やはり最悪の事態をどう乗り越えるかということをやっぱりきちんと考えていかないといけないと思います。
避難場所としての受け入れや備蓄品の提供が社会・地域貢献に
ーー企業としての社会貢献、地域貢献にはどのようなものがありますか。
濱田さん:三木プーリさんの敷地はどのくらいの広さありますか。というのも、座間は火災が一番怖いんです。一時的に地域の人たちの避難場所として使えるかどうかを企業としてお考えになれるかどうか。
平賀さん:敷地内にはテニスコート2~3面分ぐらいの芝生と広場があります。
濱田さん:例えば、そういう場所を地域住民の避難場所として受け入れる手があります。行政と相談して協定を結ぶ形は可能だと思います。
それから、災害食の備蓄はされていますか。
高萩さん:はい。最低限の水とトイレ用品、乾パンは備蓄しています。
濱田さん:災害食であれば5〜10年くらいで賞味期限が切れて入れ替えると思うんですが、ご存知の通り少し余裕を持って入れ替えていただいて、それらを子ども食堂やみんなの食堂に提供していただけると良いと思います。そうすると三木プーリさんの社会貢献にもなりますね。
前回の『わくわく寄付コンペ』に参加していたNPO法人ワンエイドさんがその窓口になっているので、つながっていただくと無駄がなくなると思います。
高萩さん:ありがとうございます。防災備蓄品のローリングストックという形は考えているので、参考にさせていただきます。
ーー先ほど貢献の一つ目に地域住民の受け入れ場所のお話があったと思うんですが、それは企業と自治体が協定を結ぶということなんでしょうか。
濱田さん:そうです。イオン株式会社は災害時に駐車場を開放する形になっています。車を避難させなければいけない人たちがいるので、駐車場を全部開放して、そこへ車を停めて良いという協定を結んでいます。日産自動車株式会社も空き地を同様に開放しています。
ーーありがとうございます。ざま災害ボランティアネットワークさんは自治体と連携されているというお話でしたが、企業と連携されていることは具体的にありますか。
濱田さん:企業とも連携したいんですが、防災と企業は相反関係にもなるので、なかなか難しいんですよね。
例えば、私どもは被災地のコミュニティー再生活動の一つとして『被災地支援タイ焼き隊』という活動をしています。
例えば三木プーリさんでお祭りをやるときがあれば、たい焼きの屋台を出させていただき、その売り上げをストックさせていただいて次の被災地へ寄付するようなことはできると思います。実際に、日産自動車さんのイベントには幅広く出店させていただいていますので、そういった形でつながることはできると思います。
地域防災には広義な連携が求められる
ーーありがとうございます。最後に平賀さんからご感想をいただいてもよろしいでしょうか?
平賀さん:短い時間でしたが、我々がまだまだ知らないことが聞けて非常に有意義な時間でした。BCPの話もありましたが、会社としては事業継続の観点からさまざまなリスクを分散することもあるんですが、やはり従業員の安全を第一に考えていきたいなと思っています。まだまだ我々も手探りの状態でやっているような部分もありますので、またアドバイスをいただければ非常にありがたいなと思っています。
また、ずっと座間にいながら座間のことを全然知らないなと改めて感じました。濱田さんの団体だけでなく座間で活動されている方たちはたくさんいますし、うちの社員も近隣に住んでいる人が多いので、もっと座間への関心を高めていきたいなと思いました。
濱田さん:ぜひ社員の皆さんにはボランティアとして加入いただき、一緒に勉強していければと思っています。土日のイベントなどに協力していただくと、例えば小学校でのイベントでは「お父さんがきた」って子どもたちが見直すかもしれません。
またご縁があれば、工場の雰囲気を見学させていただけるとうれしいです。そういう交流も必要だと思いますので、よろしくお願いいたします。
ーー地域の防災という領域はおそらく一企業と一NPOというよりは、地域全体として、より広義な連携が求められてくると思いますので、今後もぜひそれぞれのご活動について情報共有をしていただけたらと思います。
三木プーリ委員会一同:どうもありがとうございました。
濱田さん:このご縁を大切にさせていただきます。ありがとうございました。
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