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社会課題解決の実践者たちの現在地とは——『社会的事業を行う非営利・営利法人の実態調査2023』から読み解く

NPO実態調査

「誰もが社会課題解決の主役になれる世界」をビジョンとして掲げるICHI COMMONS株式会社は、地域社会の現場で社会課題解決の中心的役割を担われている330組織を対象に、2023年6月に『社会的事業を行う非営利・営利法人の実態調査』を実施しました。

本調査結果から、組織の体制、財務、広報、人材、連携に関する活動の現状と課題としてどのような傾向が見えてきたのか、解説します。

※調査結果の詳細は、『社会的事業を行う非営利・営利法人の実態調査レポート2023』としてPDFにまとめております。

社会的事業を行う非営利・営利法人の実態調査とは

ICHI COMMONS株式会社の前身である一般社団法人C4では、2018年に『全国非営利組織実態調査』を実施しました。前調査では、活動に関するコミュニケーションの課題や、活動の認知向上、パートナーシップを最大の課題点として認識しました。

前調査から5年が経った今、改めて地域社会の現場で社会課題解決の中心的役割を担われている組織の体制、財務、広報、人材、連携に関するご活動の現状と課題を調査しました。

特に、前調査で扱われていない、他セクターとの連携によるインパクトや課題、資金の獲得状況や課題、認定に関連する状況・課題・インパクトなどについても明らかにしています。

調査結果の一部抜粋

6割の組織が「企業と連携して活動に取り組んだことがある」と回答

前回(2018年)の同調査では、「スポンサーシップやパートナーシップを経験したことがある」と回答した組織の割合は約4割でしたが、本調査では6割の組織が「これまでに企業と連携した活動を行っている」と回答しました。

また、取り組んでいるSDGsとの関係では「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」「目標10:人や国の不平等をなくそう」「目標16:平和と公正をすべての人に」の組織に低い傾向が見られ、活動テーマによって企業連携有無や連携社数に差があることがわかりました。

さらに、事業規模の大小別(基準:1000万円)に企業との連携経験の有無に差があるかを分析したところ、いずれの事業規模でも「連携している」組織の割合が多かったが、事業規模が大きい団体群のほうが「連携している」割合が多いことがわかりました。

事業規模連携していない連携している
1000万円以下24.2%27.3%
1001万円以上16.1%32.4%

▶︎企業とNPOの連携事例はこちらから

企業連携のきっかけは「代表・スタッフの直接的なつながり」が約3割で最多

上記の通り、セクター間の連携は進んでいるものの、企業と連携を行う上で活用している手段に関しては「代表・スタッフの直接的なつながり」が約28%と最も多く、次いで「自体のウェブサイトやSNS、広報誌などのメディア」、「他団体からの紹介」であることがわかりました。

今後は属人的手法にとらわれずに組織同士がつながる手段を構築していくことが、さらなるセクター全体の発展につながっていくと考えられます。

取り組んでいるSDGsとして最も多いのは「目標3:すべての人に健康と福祉を」

実態調査 SDGs

組織の活動目的に最も合致するSDGsとして最も多かった回答が「目標3:すべての人に健康と福祉を」、解決しようとしている社会課題として最も多かった回答が「居場所/サードプレイス」でした。

そのほか、地域コミュニティの共創が求められる「SDGs目標11:住み続けられるまちづくり」「障害者の自立支援」「子どもの貧困」「子育ての孤立化」「若者の孤独」などの課題も上位に挙げられています。

寄付金100万円未満が約56%、500万円以上が約15%

2022年度に受け取った寄付額を聞いたところ、「10万円未満」が約23%と最も多く、次いで「101〜300万円」、「11〜50万円」でした。

受取寄付額が100万円未満の組織が約56%と過半数を占めている一方で、500万円以上寄付を受けている組織も15%以上あり、二分化していることがわかりました。

「新規法人寄付」と「継続寄付」を増やしたい組織が約55%

NPOの資金調達は、大きく分けると以下の3種類です。

1.寄付収入
2.助成金・補助金
3.事業収入

一般的にこの3本柱をバランスよく保つことがよいとされていますが、本調査の「組織としての資金・財政的な希望・展望」に対して「そう思う」のご回答割合が高い項目は、「新規法人寄付を増やしたい」の約56%と、「継続寄付を増やしたい」の約55%でした。

一方で、「助成金を取得したい」が約36%、「自治体受託事業を増やしたい」が約26%という結果であったことから、民間企業や財団からの資金調達手段のニーズが高まっていると考えられます。

また、寄付においても一時的な支援ではなく、継続的・長期的な支援を求めていることがわかりました。

寄付の決済手段、「モバイル決済・電子マネー」や「コンビニ決済」の導入は全体の5%未満

多くの組織が「銀行口座振り込み」または「現金」で寄付を受け付けていることがわかりました。

近年キャッシュレス化が進む中で、寄付の決済手段として「モバイル決済・電子マネー」や「コンビニ決済」を導入している組織は全体の5%未満の導入に留まりました。

経済産業省によると、2022年のキャッシュレス決済比率は36.0%(111兆円)で、クレジットカードが30.4%(93.8兆円)、電子マネーが2.0%(6.1兆円)、コード決済が2.6%(7.9兆円)だったことから、5%弱という結果は妥当と言えます。

一方、寄付金の年間総額1億円超の組織だけで見ると、約83%が「モバイル決済・電子マネー」や「コンビニ決済」も導入しており、反対に、現金しか導入していない組織はすべて、寄付金の年間総額が300万円以下であることがわかりました。

ここから、寄付における決済手段の多様化には改善の余地があること、そして決済手段の多様化が寄付金増加の一助となる可能性があることが確認できました。

参考:2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました|経済産業省

調査結果の概要

調査名:社会的事業を行う非営利・営利法人の実態調査
調査期間:2023年6月14日〜7月9日  
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の地域社会の現場で社会課題解決の中心的役割を担っている組織(非営利・営利問わず)
回答数:330組織