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NPOと企業の連携で生まれた“つながりの輪”|こまちぷらす×中島董商店の対談から学ぶ

株式会社中島董商店(本社:東京都渋谷区)は、「社会貢献を目指したい」という想いから、わくわく寄付コンペに参加されています。従業員の関心が高かった「子育ての孤立化」をテーマに、寄付先となる協力団体を募集しました。

初めての寄付先に決定したのは、神奈川県横浜市戸塚区を中心に活動する認定特定非営利活動法人こまちぷらす。「地域」の力で子育てを支援する仕組みを目指し、多様な人の力が活かされる環境を創出することで「孤立した子育て」をなくそうと取り組んでいる団体です。

寄付だけに留まらず、今後も連携を続けていきたいという両組織の想いで実現したリモート対談(こまちぷらす:参加者2名、中島董商店:参加者4名)では、「社会課題を自分ごと化」することの重要性が見えてきました。

各地域とのネットワークをつなげ、孤立しない育児を実現したい

——こまちぷらすさんの直近の活動内容や課題感をお聞かせください。

こまちぷらす(森さん):私たちは「まちの力」で子育てを豊かにしていきたいという想いで活動している団体ですが、それを推進していくためには「居場所」「風土」「プラットフォーム」の3つの要素が必要だと感じています。

居場所としては、現在「こまちカフェ」「こよりどうカフェ」の2つを運営しています。

現在、子育てをしている方の7割以上が孤独を感じているということで、私自身もこの課題に向けて取り組んできました。この背景には、地縁や血縁といった「つながりの希薄化」があり、その結果「出産への不安」につながり、最終的に少子化にもつながってるのではないかと考えています。

——今後取り組もうとしている活動について教えてください。

こまちぷらす(森さん):子育て環境の仕組みを「面で捉えて変えていく」フェーズに入っていく必要があると思っています。そのためには、「自分らしく居られて、つながりを得られる」居場所を生み出すことが大きなポイントになります。

人をつなげる場所を作ろうと思っている方々と地元のキーマンの方々をつなげたり、知恵や情報、制度政策につなげたりしています。また、何よりもその志を応援したい人たちのコミュニティ同士をつなげていくことを、日本中のさまざまなネットワークを持っている方々と協力して取り組んでいこうと考えています。

現在は、2025年までに10地域で10団体ずつ、合計100団体でネットワークを作っていくことにチャレンジしており、300万円のクラウドファンディングの立ち上げをしています。日本だけでなく、海外の協力者も含めみんなでムーブメントを作っていきたいと考えています。

「子育てを応援してもらえる」と感じられる社会に|ウェルカムベビープロジェクト

——こまちぷらすさんの主要活動の一つである「ウェルカムベビープロジェクト」についてお聞かせください。

こまちぷらす(大塚さん):どの赤ちゃんがどの街に生まれても、地域のみんなから「おめでとう」と迎え入れられ、子育てを温かく応援してもらえていることを感じられる社会を目指し、2016年からヤマト運輸株式会社さんと一緒に「ウェルカムベビープロジェクト」を立ち上げています。

プロジェクトの大きな柱になっているのが「出産祝い」です。赤ちゃんが生まれたご家庭(申込者のみ)に無料で出産祝いを届けており、各地域によって中身は異なりますが、共通して「ビジョンに賛同している協賛企業がご用意してくださったもの」「地域に住んでいる個人の方が手作りで携わったもの」が入っています。

また、街全体で赤ちゃんをウェルカムする活動の中には、出産祝い以外にも「ウェルカムベビープロジェクトおむつ自動販売機」があります。子育て中は外出時の荷物が多くなるので「忘れ物をしても大丈夫」「街中のどこでもオムツが買えたらいいな」という想いから生まれたプロジェクトです。

一方、企業の皆さんにとっては「自社のサービスや商品を通して何かしたい」「誰かの力になりたい」という部分を模索しながら参加されている企業さんが多いですね。

ご参加いただく企業の皆さんが、このプロジェクトをプラットフォームにしていただき、横のつながりの中で新たな取り組みが生まれたり、社員の方のやりがいにつながったりしていると、私たちもうれしく思います。

寄付金はプロジェクトの持続に向けた活動費に

——今回中島董商店さんから寄付された40万円はどのように使われるのでしょうか?

こまちぷらす(森さん):ウェルカムベビープロジェクトは、表からは見えにくいところでたくさんの方が動いてくださっています。寄付金は当プロジェクトや法人の活動に関わってくださる皆さんとの関係構築や、場の設計などに使わせていただく予定です。

本プロジェクトは寄付や協賛で運営していることもあり、需要が伸びている一方で、私たちの体力や供給が追いつかないというミスマッチが以前からありました。この8年間はとても苦しい時間でしたが、「出産祝いが手元に届いてうれしい」という方々がいらっしゃる限り、届けていきたいと思っています。

必要としている方々に届けることはもちろん、プロジェクトや活動自体が持続可能になるように、私たちもさらに活動を深めていきたいと思っています。改めて、このたびは寄付いただきありがとうございます。

Q&Aセッション|こまちぷらす×中島董商店

社員全員に「自分ごと」として捉えてもらうために

こまちぷらす(森さん):私自身も日頃から“食”の力を強く感じています。中島董商店さんは食を中心とした事業を展開されている中で、なぜ今回は「孤立した子育て」というテーマを選んでいただいたのでしょうか?

中島董商店(松本さん):『わくわく寄付コンペ』前に弊社従業員に対し実施したアンケートで「家庭と子育て」というテーマが上位となり、従業員の興味関心が高い領域から始めていきたいという想いで選ばせていただきました。

中島董商店(安原さん):キユーピーグループとしては社外的にもサステナブル活動を発信できる環境にありますが、実際に「中島董商店としても何かに取り組む必要がある」と考えていました。弊社では30、40代の社員が多いので、子育てというテーマへの関心が高かったのではないかと思います。

こまちぷらす(森さん):一人ひとりの関心を出発点にして、企業としてのサステナビリティを考えられているという進め方も非常に勉強になります。私たちも「子育ての孤立化」という課題に対し、たくさんの方に「自分ごととして何かやりたい」と思っていただけたらうれしいなと思います。

協賛として、企業それぞれの関わり方を

中島董商店(松本さん):ウェルカムベビープロジェクトに企業として協賛する場合、どのような関わり方があるかを具体的にお伺いできますか?

こまちぷらす(大塚さん):ウェルカムベビープロジェクトの協賛枠は大きく3つに分かれています。まず1つ目がプレゼントパートナー枠で、出産祝いとして物品や商品をご提供いただく枠です。プレゼント原価と、無料で届く仕組みを支援いただくための3万円を協賛いただいています。

2つ目がパートナー枠で、プレゼントの用意ができない組織・個人が、協賛で支援できる枠になります。全国への広がりを応援いただくパートナー、各地域が充実することを支えていただく地区パートナーの2種類があり、それぞれ一口5万円と3万円で協賛いただいています。

3つ目は、サプライパートナーという枠で、企業の技術をご提供いただく枠です。例えば、デザイナーさんにWebサイトやチラシのデザインをしてもらったり、割引価格で印刷できたりなど、さまざまな企業さんに協賛いただいています。

よく「自社の製品では出産祝いに入れられるものがない」というご相談も頂戴します。そのような場合は、私たち事務局が間に入り、お母さんやお父さんの声も聞きながら一緒に何が良いかを考えたりもしています。

毎年9月から11月が、翌年の出産祝いのプレゼントパートナーの募集期間で、ちょうど9月頭から2024年度分の募集を開始しています。

*プレゼントパートナー募集の詳細はこちらから

継続しやすい居場所づくりを

中島董商店(安原さん):とてもコンセプトがいいなと思いました。私の場合どうしても企業目線になってしまうので、特に子育てをカフェと結び付けて採算がとれるのかは気になってしまいました。

こまちぷらす(森さん):飲食店はもともと採算を取るのが難しく、さらにソーシャルビジネスや福祉的な要素も加わるので、なお採算を取るのが難しいです。活動には難しさがありますが、確実に言えることは「社会の中で地域の人たちとつながれる場を求めている人は多い」ということです。

求める人が多い中で、それを作ることが難しいのであれば、「作りやすく、継続しやすい」を目指していきたいと思っています。私たちの力だけではできない部分もあるので、ぜひ皆さまのお力をお借りできれば、本当に大きな力になります。

オンライン対談中の様子

企業とNPO、今後の連携のカタチとは

——最後に、今後の連携の可能性についてお聞かせください。中島董商店さんは渋谷区に拠点を持たれているので、こまちぷらすさんと連携して渋谷区で何かできればいいのかなと考えています。ウェルカムベビープロジェクトの拠点をどのような基準で、どのように増やしているのかという点も教えていただきたいです。

こまちぷらす(森さん):「人に干渉しづらくなっている」「地縁、血縁が弱まっている」中で、関わり合うことに難しさが出ているのは共通課題なので、これは地域がどこであれ取り組んでいくべき課題だと思っています。

こまちぷらすとしては、地域の中で「やりたい」とお問い合わせいただいた皆さんが、その地域で場を立ち上げやすくなる支援をしたいと考えています。

そのときに基準となるのは「関わりが生まれる居場所」かどうか。単なる場があるだけでなく、そこに「自分ならこんなふうに関われる」「関わりたい」という参加の余白がある場を増やしていきたいです。そのためには人と人が対話できる場を作っていきたいと思っており、そこに共感してくださる方々と一緒に歩んでいきたいと考えています。

皆さんにも、このような活動に共感していただけたら応援いただきたいと思っているので、また社員の皆さんとお話しできる機会をいただきたいなと考えています。

今回の対談で、さらに相互理解を深めた両組織。
次回は9月に開催されるウェルカムベビープロジェクトのキックオフ会に中島董商店の皆様も参加されるようです。今後のさらなる連携、そして社会課題解決に向けた取り組みに目が離せません。

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