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ビジネススキルを提供するプロボノ、社員&NPOにとっての魅力とは?|Panasonic【前編】

プロボノとは、社員が業務を通して得たスキルを活かすことができる社会貢献の方法です。支援先組織の役に立つだけでなく、参加した社員の成長につながる人材育成効果が大きいとされます。

2011年からプロボノ活動を通してNPO/NGOの組織基盤強化を支援しているのがパナソニック株式会社。

同社の企業市民活動「NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」に関する前編となる本記事では、 プログラムの内容や具体的事例、そして社員の方の声をお伝えします。

(本記事には、記事下記載の参考ページからの引用のほか、パナソニック(株) オペレーショナルエクセレンス社 企業市民活動推進部 事業推進課 課長の東郷琴子さんにうかがったお話が含まれます。プログラム立ち上げの背景や10年間の成果についてうかがった後編はこちら。)

社員のビジネススキルを活かすプロボノ

パナソニックが企業市民活動(*1) のひとつとして行っているのが「NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」です。

社会課題解決に取り組むNPO/NGOとチームを組んで事業展開力を強化する同プログラムは、マーケティング調査、中長期計画立案、ウェブサイトリニューアル、営業資料作成、業務フローの改善提案など、人手の薄いNPO/NGOで後回しになりがちな分野をサポートするもの。

プログラムの特徴のひとつは、一人ではなくチームを組んで行うということです。現在は、6~8名、週5時間から7時間程度、6ヶ月前後でのプロジェクトが多くなっています。

成果物の納品とともにプロジェクトが終了するという推進期間があらかじめ決まっている点、メールベースで進む点などで、忙しい企業人にとっても参加しやすく、また達成感を味わえるものになっています。

「ビジネススキルを活かす」と言うと少々敷居が高く感じられるかもしれませんが、特定の職種でなければできないということはないとのこと。同社で勤務した経験とNPOを応援したいという気持ちがあれば、誰でも参加できるものだと言います。

*1: 「社会に貢献しているかどうかは自分たちではなく社会が決めること」との考えから、同社では「社会貢献活動」ではなく「企業市民活動」という表現が用いられています。

事例:次の災害に活かせるよう議事録をデータベース化

具体的な事例をご紹介しましょう。

2016年熊本地震の翌年に、特定非営利活動法人くまもと災害ボランティア団体ネットワーク、通称KVOADへの支援が行われました。

地震発災以降、同団体では毎日、行政やNPOのメンバーが集まって会議が開かれていたと言います。1度の会議でA4用紙に30枚ほどにもなるという議事録は全て、大量の紙で保管されたまま。次にどこかで災害が起きたときに、すぐに活用できるような形ではありませんでした。

そこで、キーワードを抽出し、どの時期に、どのような課題で、どれくらいの期間にわたり話し合いがなされたかを“見える化”データベースを作り、課題やノウハウを整理するというプロジェクトが組まれました。

課題ごとの件数推移が“見える化”されたグラフ。

災害支援に携わる現場の方々から高い評価を得たこともあり、2019年、2020年には、より成果物の効果が広がるよう、全国組織である全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)の支援も行われました。

“異文化交流” を通して、双方が得るもの

プログラムではNPOへの支援が行われますが、得られるものがあるのはNPO側だけではありません。

参加する社員側にも、社会課題解決に取り組むNPOとの協働を通して、視野が広がる、仕事へのモチベーションが上がるなどのメリットがあります。

例えば、2012年、日本初となる中長期事業計画策定の支援が行われた、認定NPO法人気候ネットワークとの連携。

温暖化防止を目的とする気候ネットワークは、国際交渉への参加、国内での政策提言、地域レベルでの対策など、多岐にわたる取り組みを行っています。しかし、活動内容が広がるにつれて組織力強化の必要性が増すとともに、壮大なビジョンのもとで現実と乖離しない計画を立てることの難しさを感じていたと言います。

そこで求められたのが、企業が持つノウハウや第三者としての視点でした。組織の方向性や課題についてのヒアリング、中間提案などを経て、NPO内には「全体でしっかり話し合おう」との機運が生まれたと言います。社員側からNPO側への最終提案では、仕組みづくりに加えて会員拡大に向けた取り組みが提案され、NPO側は「まさにやりたいと思っていたことを“見える化”してもらった」とのこと。

一方、NPO側の姿勢に、社員のほうも刺激を受けました。

「遠い未来に目を向けているNPOと、今、目の前にいるお客さまに最適なモノを提供しようとする」自分との視点の違いを感じ、「これからのメーカーは(中略)、お客さまやその家族・友人、地域・社会に至るまで、将来を見据えた二次的、三次的な広がりの先も考慮する視点を持つべきだと実感」したとの声が聞かれました。

認定NPO法人気候ネットワークとの協働。

また、2015年度、別のプロボノプログラムに参加した社員へのインタビューでは、「異文化交流みたいな感じですよね」との感想がありました。「いかに自分が社内の狭い世界で生きているのかも分かりました。NPOの皆さんはすごく熱くて、私、自分はあんなに熱く仕事のことを語っていないなと反省したり。

さらに、業務を通して身に着いた客観性やスキルが活きると実感する場面もあるようです。「企業の場合は方向性を一致させるために方針発表があり、さらにそれを落とし込んでいきます。情報の整理の仕方も、大中小に箇条書きのカテゴリーをくくっていくなど、企業としては自然の動きだと思うんですけど、そういう普段している形で資料を提供したときに、NPOの方々から非常に喜ばれ褒めていただきましたね。カテゴライズとか分析の仕方とか。」

(プロボノプログラムの成果については、本記事後編でも触れます。アンケートを通して10年間の成果がまとめられた資料はこちら:プロボノプログラム10周年アンケート デジタルブック『プロボノのススメ』

組織基盤強化支援のひとつとしてのプロボノプログラム

社員のスキルが活かされることや、NPOとチームを組んで進めていくことが魅力となっているプロボノプログラム。パナソニックでは、同プログラムを含め、社会課題解決に取り組むNPO/NGOが持続的に活動していくために組織基盤強化を支援しています。

後編では、その中のひとつとしてプロボノプログラムが立ち上げられた背景や、開始から10年を超える同プログラムの成果についてうかがいます。

参考ページ