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子どもの貧困の現場から考える、企業の強みを活かした共創

 
経済同友会が主催する「ソーシャルウェンズデー」は、民間・公共・市民社会の3つのセクターを越えて社会課題解決に取り組むトライセクター人財の育成を目指す取り組みです。2026年度のリーダープログラムは参画企業を30社以上に拡大。「個人の気づきから、組織の学び、そして企業の前進へ」をテーマに、現場セッションと共創セッションを交互に展開しています。

この記事では、2026年5月20日に認定NPO法人キッズドアを迎えて開催された第2回・現場プログラムの内容をご紹介します。日本の子どもの貧困という社会課題の現場に触れ、企業とNPOの協働事例を学んだうえで、参加者一人ひとりが自社の強みを活かした協働を構想する一日となりました。


現場を知ることから始まる、第2回プログラム

 
第2回は「現場」をテーマとしたセッションです。冒頭ではICHI COMMONS代表取締役の伏見崇宏氏が、前回のディスカッションのおさらいと、参加者アンケートの結果を共有しました。

第1回のアンケートでは、参加企業が課題と感じているトピックが明らかになりました。最も多かったのは「社員エンゲージメント」で87%、次いで「社内推進の壁」が78%、「社会課題の現場との距離」が61%と続きます。自発的な参加をどう生み出すか、サステナビリティ活動を社内でどう説明・推進するか、触れたい現場や連携先とどうつながるかといった、企業規模や業界を問わず共通する悩みが浮かび上がりました。こうした課題意識を土台に、今回はまさに社会課題の現場に踏み込むプログラムとなりました。
 

最新の現場報告、日本の子どもの貧困のリアル

認定NPO法人キッズドア 代表理事の渡辺由美子氏によるプレゼンテーションでは、日本の子どもの貧困をめぐる厳しい実態がデータとともに語られました。

日本では9人に1人の子どもが貧困状態にあり、ひとり親世帯の貧困率は44.5%にのぼります。ひとり親世帯の約半数が貧困状態にあり、そのうち9割が母子世帯です。日本のひとり親は就労率が先進国で最も高い一方、相対的貧困率も先進国で最も高いという、いわば「世界一働いているのに、世界一貧困」というワーキングプアの構造に置かれていると、渡辺氏は指摘します。
 

 
物価高騰はこうした家庭をさらに追い込んでいます。キッズドアの調査では、低所得のファミリーサポート登録世帯の約8割で保護者の食事の量が減り、保護者の食事が減ったり栄養バランスが悪化したりしている世帯は75%にのぼります。子どもの成長に合わせた衣服や靴を購入できない世帯も57%に達しました。「真面目に働いていても余裕がなく、いつもお金の心配をしている」「食事の回数を減らして節約している」といった保護者の切実な声も紹介されました。

さらに、世帯所得は子どもの学力や進学率とも明確に相関しています。高校卒業後の大学等進学率は、全世帯が83.8%であるのに対し、ひとり親世帯は65.3%、生活保護世帯は40.0%、児童養護施設は36.4%にとどまります。渡辺氏は「子どもの貧困対策は福祉ではなく投資」だと強調します。一人の子どもを貧困の連鎖から救うことには1億円以上の効果があるという試算もあり、放置すれば社会全体で大きな損失が生じます。キッズドアは学習支援を通じて自立する力を育み、この連鎖を断ち切ることを目指しています。
 

企業との協働事例、強みの掛け合わせが生む価値

続いて、キッズドアが実際に企業と取り組んできた協働事例が紹介されました。いずれも、企業の本業や強みを起点にしながら、社員のエンゲージメント向上や事業価値の創出につなげている点が特徴です。

一つ目は、JPモルガン・チェースとの「Career Connect Japan / STEP FOR TOMORROW」。世帯年収やひとり親家庭などさまざまな事情を抱える女子高校生約100名を対象に、自分の強みを知り、将来を考え、一歩踏み出すことを支援するプログラムで、今年度で4年目を迎えます。社員ボランティアの事後アンケートでは満足度が100点満点中平均95点を記録し、「プログラムに参加したことで自社を誇りに思うようになった」という項目も高い評価を得ました。生徒との対話を通じて社員自身も新たな気づきを得るなど、支援する側・される側を超えた双方向の学びが生まれています。

二つ目は、生活用品メーカーのスケーターとの「つなぐランチプロジェクト」。商品の売上の一部がキッズドアへの寄付となる「寄付付き商品」の取り組みで、消費者は普段どおり買い物をするだけで、無理なく社会参加できる仕組みです。この事例では、CSR文脈の取り組みでありながら、商品開発・マーケティング・営業・デザインなど複数の事業部門が自然に関与し、社会貢献は一部の専門担当の仕事という構図を超えた点が大きな成果となりました。さらに商品はハンズやイオンの一部店舗でも採択され、企業・消費者・NPOに加えて流通・小売も巻き込む形へと広がっています。
 

 
これらの事例に共通するのは、社員のエンゲージメント向上、CSRの実践とCSV(共通価値の創造)、他社との協働によるネットワーク効果など、企業にとっても確かな価値が生まれているという点です。前回のワークショップでも「他社の企業名が挙がると社内の稟議が通しやすい」「一社ではなく複数社で取り組みたい」といった声が上がっており、まさにその実践例が共有された形となりました。

自社の強み×社会課題から、NPOとの協働を構想する

インプットを踏まえ、後半はチームディスカッションを実施。今回のテーマは「自社の特徴・強み × 解決したい社会課題から、NPOとの協働を構想する」。①自社が解決したい社会課題と、②自社が持つ特徴・リソースを掛け合わせたときに、どのような協働プログラムが考えられるか、そしてそのハードルはどこにあるかを議論しました。

立場やセクターを超えて一個人としてフラットに、他人事ではなく当事者意識を持って、初対面でも共創者として率直に対話する。そんなグラウンドルールのもと、各チームが活発に意見を交わしました。自社事業と接点のある社会課題、サステナビリティ戦略やパーパスとの整合、社員が共感できるテーマといった切り口から課題を掘り下げ、本業の技術やノウハウ、人材・ネットワーク・拠点、ブランドや顧客接点といった自社の強みを棚卸し。両者を掛け合わせることで、具体的な協働プログラムのアイデアと、実施に向けて越えるべきハードルが浮かび上がっていきました。

全体共有では、各チームから協働の可能性とハードルが発表されました。キッズドアの現場報告と企業協働事例という具体的なインプットがあったことで、何ができるかという抽象論にとどまらず、自社の資源に引きつけた実践的な構想へと深まっていきました。
 

横断的な共創が生み出すコレクティブインパクトへ

ソーシャルウェンズデーが目指すのは、各社の戦略的な共創企画を生み出すリーダープログラム、社員が個人として機会をつかむオープンプログラム、そして大学連合や多様な連携を拡張するエコシステムが重なり合う、横断的なコレクティブインパクトの創出です。

今回の第2回は、子どもの貧困という現場の切実さに触れ、企業の強みが社会課題解決の力になりうることを具体的な事例から学び、自社に引きつけて構想する、インプットからアウトプットまでが一続きになったプログラムとなりました。

サステナPressでは、引き続き12月までのリーダープログラムの内容をご紹介するとともに、トライセクター人財の活躍や共創事例、これからの社会課題解決の新たな形を探っていきます。