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TEAM BEYOND パラコネクト#9 サービスグラント × パラ・パワーリフティング連盟|プロボノの力で運営構造を再設計、支援を超えた関係へ

 
ICHI COMMONSは東京都と協働で、パラスポーツ競技団体と企業の連携を促進するオンラインマッチングプラットフォーム「TEAM BEYOND パラコネクト」を運営しています。本記事では、このプラットフォームを通じて実現した連携事例として、認定NPO法人サービスグラントと日本パラ・パワーリフティング連盟の取り組みをご紹介します。

自身のスキルを社会貢献に活かしたいビジネスパーソンと、課題を抱える団体をつなぐ社会参加プラットフォーム「GRANT(グラント)」を運営する認定NPO法人サービスグラント。そして、「すべての体に、最高記録は眠っている。」をミッションに掲げる日本パラ・パワーリフティング連盟。両者の連携は、プロボノ(仕事のスキルや経験を活かしたボランティア)の力を通じて、競技団体の運営そのものを再設計する取り組みへと発展しています。

TEAM BEYOND パラコネクトとは

「TEAM BEYOND パラコネクト」は、東京都とICHI COMMONS株式会社が協働して2025年8月に開設したオンラインマッチングプラットフォームです。

競技団体のニーズと企業のアセット(提供できるノウハウや資源)を可視化し、コーディネーターによる伴走支援を通じて最適な連携を実現します。従来は年一回の対面交流会で行われていたマッチングを、年間を通じて支援する仕組みに発展させ、障害者スポーツ環境の充実や競技団体の基盤強化を図るとともに、企業の社員エンゲージメント向上や社会共創活動の推進にもつながる新たな仕組みです。
 

サービスグラントと日本パラ・パワーリフティング連盟のマッチング

今回ご紹介するのは、社会参加プラットフォーム「GRANT(グラント)」を運営する認定NPO法人サービスグラント(以下、サービスグラント)と、日本パラ・パワーリフティング連盟(以下、連盟)との連携です。

多くのパラスポーツ競技団体は、誰もがスポーツを楽しめる社会を広げようと取り組む一方で、慢性的な人手不足や資金不足という課題を抱えています。連盟もまた、企業・団体との関係が協賛や支援といった形が中心で、活動の価値が社会や企業の課題解決と構造的に結びつく状態には十分発展していないという課題を感じていました。さらに連盟内部では、企画・広報・調整・発信といった多くの業務が特定の担当者に集中しやすく、活動の設計や情報整理が属人的になりやすいという構造的な課題もありました。

一方、企業で働くビジネスパーソンの間では、パラスポーツの可能性やインクルーシブな社会の実現への関心が高まっているものの、「自分たちの経験をどう活かせばよいか分からない」という声も少なくありません。だからこそ、両者の間には橋渡しが必要な状況がありました。

こうした中、外部の専門性や知見を活用しながら活動を再構築する手段を模索していた連盟が出会ったのが「GRANT」でした。団体が抱える具体的な課題とビジネスパーソンが培ってきた経験やスキルをマッチングし、両者をパートナーとしてつなぐ。この仕組みを通じて、連盟は運営構造そのものの再設計に乗り出すことになりました。
 

社会参加プラットフォーム「GRANT」が生み出す出会い

 
「GRANT」は、自身のスキルを社会貢献に活かしたいプロボノワーカー(ボランティア)と、解決したい課題を抱える団体をつなぐプラットフォームです。

プロボノとして団体支援を希望する登録者は2026年5月現在で2,500名を超えており、団体が具体的な課題をプロジェクトとして掲載すると、関心を持つワーカーから立候補が集まる仕組みになっています。単なるマッチングにとどまらず、プロジェクトの全行程をオンライン上で可視化・管理し、ワーカーと円滑にやり取りできるコミュニケーションインフラとしての機能を備えているのが特徴です。

サービスグラントは、社会課題を前に誰もが当たり前に行動を起こし、多様な人や組織が互いの違いを尊重しながら協働できる「社会参加先進国」の実現をビジョンに掲げています。今回のパラスポーツ競技団体とビジネスパーソンのマッチングは、まさにこのビジョンを具現化する取り組みです。

その反響は大きく、「パラスポーツ競技団体と企業の連携をプロデュースする」プロジェクトでは、掲載から短期間で300名以上に閲覧され、複数のワーカーがエントリーしました。多くのビジネスパーソンがパラスポーツの可能性に注目し、自らのスキルを活かせる具体的な場を求めていたことの現れだといえます。
 

 
現在、連盟には複数のプロボノワーカーが参画し、連盟の活動に関するプロジェクトを個別の業務としてではなく、運営構造そのものとして再整理する視点から、主に4つの領域で取り組みが進んでいます。

まずは選手の魅力発信として、選手との対面面談で相互理解を深めたうえで発信の方向性や企画案を再設計し、現在は練習現場の見学を通じて、より実態に即した発信設計へと移行しています。次に、交通費精算をはじめとした経費処理プロセスの改善です。現行フローを実際に体験したうえで改善提案を行い、その提案を踏まえた再運用を進めています。

3つ目は、寄付サイトの運営と改善です。すでに公開済みのサイトについて、寄付につながる導線設計や情報発信のあり方、利用者の動線改善といった、実際に機能させるための改善フェーズに入っています。そして最後に、助成金収支簿の運用改善です。実際の入力作業を経験したうえで運用上の課題や改善点をフィードバックし、単なる記録作業ではなく運用設計としての改善検証を行っています。

これらはいずれも単発的な業務支援ではなく、連盟の運営機能(発信・業務・資金・制度)を分解し、それぞれの領域を外部の専門性と接続しながら再設計していく試みとして位置づけられています。
 

作業支援から視点の言語化へ、生まれた気づき

最も印象的だったのは、業務支援の範囲を超えて外部の視点が加わることで、連盟内では見えていなかった価値や気づきが言語化されたことだと連盟は語ります。たとえば交通費精算のプロセスでは、依頼した作業に加えて監査的な観点からの改善提案が自主的にまとめられるなど、業務の見え方そのものに変化が生まれました。体験会や大会観戦でも、参加者・観戦者の視点から競技の魅力や改善点が整理され、内部では見落としがちな論点が明確になっています。

当初は事務局業務の補助を想定していましたが、やり取りを重ねる中で、価値は作業支援そのものではなく、初めて競技や連盟に触れる人の視点を言語化し、意味として整理することにあるという認識へと変化していきました。結果として、業務の効率化以上に、活動そのものの見え方や解釈の解像度が一段上がったことが大きな変化だといいます。
 

 
サービスグラントは、この取り組みをさらに多くのパラスポーツ団体へと広げ、支援という枠組みを超えた新しいスポーツの関わり方を社会に定着させていきたいと考えています。多くの競技団体がリソース不足という課題を抱える中、ビジネスパーソンの専門性が加わることで、その課題は大きな可能性へと変わります。今後はより多くの団体にプロボノの仕組み を活用してもらい、団体の基盤強化と競技の魅力向上を同時に実現するサイクルを加速させていく方針です。

そこに込められているのは、パラスポーツを障がいがある人のためのスポーツや観戦するだけの対象としてだけでなく、障がいの有無に関わらず誰もが自分の強みを活かして関わっていける形へとアップデートしていきたいという思いです。

連盟もまた、企業連携や外部協力のあり方を、単なる支援関係ではなく、それぞれの立場や経験から得られる視点を接続し、相互に価値を更新していく関係性として再定義していきたいと語ります。現時点では連盟側に運営上の改善や発見が多く生まれている段階ですが、GRANTに参加するワーカーにとっても、関わり方によっては自身の経験が整理され、新たな気づきにつながる可能性があります。一方向の支援で終わらせるのではなく、関わる双方にとって意味や価値のある循環を生み出していくこと。それが両者の目指す未来です。

これは、競技団体としての役割を、競技運営から社会との接続設計へと拡張する試みでもあります。サービスグラントと連盟の取り組みは、企業と競技団体が共に価値を創り出す共創モデルの一例として、今後の広がりが期待されます。
 

TEAM BEYOND パラコネクトでは、引き続きさまざまな連携事例の創出を支援してまいります。

>> TEAM BEYOND パラコネクト はこちら
 

会社・団体概要

■ 認定NPO法人 サービスグラント 仕事のスキルや経験を活かして社会貢献する「プロボノ」を推進する認定NPO法人。社会参加プラットフォーム「GRANT(グラント)」の運営等を展開。
https://susnet.jp/orgs/servicegrant

■ 特定非営利活動法人 日本パラ・パワーリフティング連盟 下肢に障がいのある選手によるベンチプレス競技「パラ・パワーリフティング」の普及・強化を行う国内統括団体。
https://susnet.jp/orgs/jppf