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SDGsウォッシュとは?指摘企業の事例から回避する方法を学ぼう

SDGsに積極的に取り組む企業は、環境や従業員を大切にしたい人が増えた昨今では評価が高い傾向にあります。
しかし、無計画・無理やりにSDGsに取り組むと「SDGsウォッシュ」につながり、反対に評価を下げかねません。
SDGsウォッシュの指摘企業の事例から回避方法を学び、達成可能かつ誇張のないSDGsを取り入れましょう。

SDGsウォッシュとは

最初に、SDGsウォッシュについて解説します。

SDGsウォッシュとは、企業が表面上はSDGsに取り組んでいるように見えても、実際は取り組めていない・取り組む予定がない状態です。

例えば、環境に優しい原材料を使用した製品によってSDGsに取り組んでいても、生産過程で大量の有害物質を排出していてはSDGsとは言えません。

また、どれだけ製品が環境に配慮されていても、その製品を作るために従業員を過酷な労働環境で働かせている場合のSDGsではないでしょう。

さらに、「とりあえずSDGsに取り組んでいるように見せよう」とホームページにSDGsに関係ありそうな画像や文言などを載せるだけで、実際は具体的な計画・行動が伴っていない企業もあります。

上記のような見せかけのSDGsは、SDGsウォッシュに当てはまります。

SDGsウォッシュが企業に与えるリスク

世間に求められているからといって、やみくもにSDGsに取り組む・取り組んでいるふりをすることはおすすめしません。

SDGsウォッシュは、企業に以下のようなリスクを与えます。

企業ブランドが下がる

SDGsは環境や従業員を大切にしたい人にとって、投資先にもなるほど重要なポイントです。

そのため、SDGsに積極的に取り組んでいる企業は、株主や消費者から高評価を得やすい傾向にあります。

しかし、SDGsによって評価される分、SDGs活動や目標が表面上・偽りであった場合の反動も大きい点に注意してください。

SDGsウォッシュは企業ブランドを大きく下げ、株主の投資先から外れたり、消費者の不買運動になったりするリスクもゼロではありません。

SDGsウォッシュを避けるためにも、SDGsの達成計画や取り組み内容は、しっかり検討して達成可能な根拠ができてから公表する必要があります。

資金や人材の確保、新しいビジネスチャンスが難しくなる

上記で述べたように、SDGsウォッシュは株主や消費者からの信頼を失いかねません。

その結果、資金や人材の確保が難しくなるというリスクにも繋がります。

資金の問題は先述したように、株主の投資先から外れたり消費者から不買運動の対象になったりすることで起こります。

また、SDGsウォッシュによって評価が下がってしまうと、その企業で働きたいという人も少なくなってしまうでしょう。

在職中の従業員が離れてしまうリスクも踏まえると、SDGsウォッシュは人材確保の点からもデメリットがあります。

資金や人材の確保が難しくなると、新しいビジネスを始める土台を作れなくなります。

SDGsウォッシュは将来的に見ても、さまざまなリスクがあると言えるでしょう。

SDGsウォッシュのよくあるパターン

企業がやってしまうSDGsウォッシュとして、どのようなパターンがあるのでしょうか。

ここでは企業によるSDGsウォッシュのよくあるパターンを3つ紹介します。

グリーンウォッシュ

グリーンウォッシュとは、企業の活動や製品が環境に配慮しているというイメージを持たせるものの、実際は見せかけ・効果がない状態を指します。

例えば、清涼飲料水のラベルが一時的に緑色になった場合、グリーンカラーから「健康に良さそう・環境に配慮していそう」というイメージを抱くでしょう。

しかし、実際は特に健康や環境にとって良い成分や生産過程ではなく、誤解を招く製品とみなされてしまいます。

また、脱プラスチックの一環でプラスチックストローを使わない企業においても、グリーンウォッシュは起こりやすい傾向にあります。

プラスチックストローの代わりに紙ストローを取り入れることにより、一見環境に配慮しているようになるでしょう。

ところが、「紙=環境に優しい」というわけではなく、紙の構造によってはリサイクルできず、かえって廃棄物の増加につながります。

グリーンウォッシュを避けるためには、「本当にこの製品や活動がSDGsにつながっているか」を確かめたうえで実行することが大切です。

サステナビリティ報告書などの表現の誇張

サステナビリティ報告書などの表現の誇張も、企業によるSDGsウォッシュによくあるパターンです。

例えば「プラスチックを使用しない紙でできた容器」と報告した場合、「プラスチックをまったく使用していない・100%紙でできている」というイメージを与えるでしょう。

しかし、実際はプラスチックの使用量を少し減らしただけで、紙は表面上でしか使用されていない容器であれば、株主や消費者は誇張報告と感じます。

サステナビリティ報告書だけでなく、その企業がPR活動やホームページなどでも「環境に配慮した製品」として推していると、なお落差を感じやすくなるでしょう。

「サステナビリティ」や「環境に配慮した」、「エコな製品」などは誇張表現になりかねないので、使用するワードは慎重に選び、その表現を裏付ける理由まで記載すると良いでしょう。

サステナビリティと関係の薄い商品・サービスにSDGsを利用

グリーンウォッシュや誇張表現は、サステナビリティと関係の薄い製品・サービスに「SDGs」を利用することで起こると言えます。

SDGsへの知識が不足していると、「この製品はプラスチックを使用していないからSDGsに関連しているだろう」と、サステナビリティと関係が薄い商品・サービスでもSDGsに勝手に紐づけてPRしてしまいます。

その商品やサービスが本当に「サステナブル」「地球に優しい」「環境配慮」と関連しているか、表面上だけでなく生産過程や廃棄物量なども踏まえて考えなければなりません。

このようなワードを使用してはいけないというわけではなく、根拠となる説明ができるようにしましょう。

SDGsウォッシュの指摘を受けた企業事例

ここでは実際にSDGsウォッシュの指摘を受けた企業例について2つ紹介します。

アメリカやドイツなどの海外では、SDGsウォッシュに対して監視やペナルティーが厳しい傾向にあり、提訴される可能性も高いです。

日本の企業であってもSDGsウォッシュによる提訴を避けるためにも、ぜひ反面教師にしてください。

指摘企業事例①:フォルクスワーゲン(ドイツ)

ドイツの自動車メーカー・フォルクスワーゲン社は、ディーゼル車の排出ガスを低減させて環境負荷を減らすPRをしました。

しかし、実際は走行中に排出ガス低減装置が働かない作りとなっており、燃費データのごまかしになりました。

指摘企業事例②:ウォルマート(アメリカ)

アメリカのスーパーマーケットチェーン・ウォルマート社は、誇張表現によってSDGsウォッシュの指摘を受けました。

シーツやタオルなどさまざまな製品で「サステナブル」「環境に優しい」と表現したうえで竹製を謳っていましたが、実際は竹を使用しておらずレーヨン製ということが判明しました。

また、竹を使用している場合でも生産過程で大量の有害化学物質を使用しているため、環境に優しいとは言えない点も、SDGsウォッシュを指摘された一因と言えるでしょう。

SDGsウォッシュを回避するために企業が取るべき行動

ポイント

SDGsウォッシュは企業の信頼低下に大きくかかわっており、資金や人材、ビジネスチャンスなどさまざまな面においてデメリットがあると説明しました。

SDGsウォッシュを回避するために、企業は以下のような3つの行動を取るべきです。

透明かつ正確な情報を開示する

SDGsウォッシュが起こる一因として、企業が公表する情報があいまい・不透明という点があります。

SDGsに関連していそうなワードや画像を載せているだけ・原材料の一部が環境に優しいだけで、他の原材料や生産過程に問題があるなどの状態は、株主や消費者から矛盾を指摘される可能性が極めて高いでしょう。

SDGsウォッシュを回避する対策として、透明かつ正確な情報を開示することが挙げられます。

表面上の情報だけでなく、生産過程や実際の廃棄量データなども併せて公表すると、より

信頼性がアップするでしょう。

株主や消費者が疑問に感じそうな点をあらかじめ想定し、情報開示することが大切です。

生産過程について開示している企業事例:株式会社infoBANK

生産過程について開示している企業として、株式会社infoBANKの事例があります。

infoBANKは竹を使用したタオルや寝具などを中心としたメーカーです。

先述したウォルマートも竹を用いた製品を取り扱っていますが、生産過程で有害物質を排出したりバンブーレーヨンを使用していたりする点からSDGsウォッシュを指摘されたと解説しました。

一方、株式会社infoBANKでは、バンブーレーヨンとバンブーリネンの生産過程の違いについて詳しく説明し、エコであることを根拠を持って説明しています。

infoBANKのホームページではバンブーレーヨンとバンブーリネンの品質表示の比較も載せているため、違いが一目瞭然です。

infoBANKが取り入れているバンブーリネンは、竹繊維と綿を混ぜ合わせ生地を作成している生産過程を明記しているため、SDGsウォッシュが起こりにくいでしょう。

また、バンブーレーヨンは化学物質を混合している点や竹本来の効能があるか不明という点も表記しているので、消費者はバンブーレーヨンとバンブーリネンの違いを把握したうえでバンブーリネンを取り入れやすくなります。

ステークホルダーとの対話やフィードバックを積極的に受け入れる

SDGsの活動や目標が独自の判断だけで決定されSDGsウォッシュにならないためにも、ステークホルダーなど第三者からの評価を取り入れることが大切です。

ステークホルダーの評価は対話やフィードバックによって得られるため、常に対話やフィードバックを積極的に受け入れられる体制を整えておきましょう。

また、ステークホルダーから受けたフィードバックなどは第三者からもチェックできるようにホームページなどで公開するとより効果的です。

サステナビリティについて外部と対話している企業事例:株式会社ネオキャリア

株式会社ネオキャリアは、新卒紹介や中途人材紹介などを中心とした人材事業の企業です。

人材事業はSDGsの「働きがいも経済成長も」や「産業と技術革新の基盤をつくろう」などさまざまなゴールに大きくかかわっている分野と言えるでしょう。

そのため、ネオキャリアは目先の利益だけでなく、SDGsの達成を踏まえた活動を重視しています。

特にステークホルダーを大切にしており、ステークホルダーエンゲージメントの向上に注目しています。

実際にステークホルダーとの協働は複数回に及び、NPOとかかわったこともありました。

2021年には「NPOと企業の交流事業」というオンラインイベントを開催し、NPOと企業の協働によってどのように社会貢献できるのか、どのような社会課題を解決できるのかなどについて話し合いました。

NPOや企業以外にも、社会貢献活動に興味のある個人も参加できるので、より広範囲に社会貢献を広められるイベントと言えるでしょう。

このようなサステナブルに関するイベントのあとには、レポートやステークホルダーの声をまとめてホームページで公開しています。

例えばNPO法人「みんなのことば」とのコンサートイベントのあと、代表者のインタビューで感想やサステナブル活動の価値などが公開されており、ネオキャリアとステークホルダーの関係性も伺えるでしょう。

信用ある第三者機関から認定を受ける

独自のSDGs活動や目標があるだけでなく、信用ある第三者機関から認定を受けている企業は信頼性が高く、SDGsウォッシュになりにくい傾向にあります。

信頼ある第三者機関とは、日本SDGs協会や各メディアの賞などが挙げられます。

認定を受けているだけで、実際のSDGs活動や目標の内容をチェックする前に「SDGsに積極的に取り組んでいる、達成可能な目標を立てて実行している」という印象を与えられるでしょう。

認定を受けるための条件や難易度は機関によって異なるので、獲得可能かつ効果的な第三者を選ぶことが大切です。

第三者から認定を受けている企業事例:キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社は、飲料水を中心とした大手メーカーです。

キリンは2019年から4年連続で「日経SDGs経営大賞」を受賞しており、SDGs経営のレベルの高さを第三者評価で証明されました。

日経SDGs経営大賞とは、事業を通じてSDGsに貢献し、企業価値を向上させた企業に与えられる賞のこと。

SDGsに関する戦略や経済価値だけでなく、環境や社会貢献、ガバナンスなど多方面から評価されるため、受賞した企業は多くの点でSDGsに貢献していると言えるでしょう。

また、SDGs経営対象は上記の評価ポイントごとに偏差値が設定されており、「S++」や「S+」などで表示されます。

キリンはSDGs戦略・経済価値評価とガバナンス評価で最高の「S++」を、社会価値評価と環境評価で「S+」を取得しており、最高位の偏差値70以上にランクインしました。

キリンが日経SDGs経営大賞を受賞した取り組みとして、「スロードリンク」や「免疫ケア」、「レインフォレスト・アライアンス認証」などが挙げられます。

大手企業かつ「酒類メーカーとしての責任」を重視し続けているキリンだからこそ、日経SDGs経営大賞を連続受賞していると言えるでしょう。

まとめ

今回の記事では、SDGsウォッシュについて解説しました。

SDGs活動に積極的に取り組む企業が評価される昨今だからこそ、SDGsウォッシュが企業にもたらすリスクも大きくなります。

企業のSDGsウォッシュは、「SDGsを理解しないまま何となく目標や活動を公表してしまった」「原材料の一部だけでSDGsと判断したが、生産過程などは考えていなかった」などの理由から起こります。

このような事態を避けるためにも、透明かつ正確な情報公開をする・ステークホルダーの声を公表する・信頼性のある第三者から認定を受けるなどのポイントを押さえましょう。

SDGsは自分たちの目線だけでなく、株主や消費者、SDGs関連機関などの目線からも考慮することが大切です。

第三者から見ても明確かつ信頼性が高いSDGs目標や活動を掲げ、SDGsに真摯に取り組んでいる企業であることを証明していきましょう。