ESG経営やサステナビリティ経営など、企業の社会課題への取り組みが重要視される中、「インパクトレポート」が注目を集めています。本記事では、インパクトレポートの定義や事例を踏まえ、企業がインパクトレポートを作成するメリットについて解説していきます。
目次
インパクトレポートとは何か
インパクトレポートは、企業活動を通じて社会や環境に与えたポジティブな影響(インパクト)を定量的に測定・評価し、その結果を示す報告書です。企業が注力する特定の社会的・環境的目標に重点を置くことが多く、成果や今後の課題を含めて具体的に可視化し報告するのが特徴です。社会的インパクトに関心の高い投資家やパートナー企業を中心に、あらゆるステークホルダーに向けて発行されます。
インパクトレポートを作成するメリット
インパクトレポートを用いて企業が社会や環境に与えるポジティブな影響を具体的に示すことで、幅広いステークホルダーからの信頼を獲得できます。
また、企業の活動内容とその成果を透明性高く報告することで、ブランド価値の向上や競合他社との差別化にもつながります。
さらに、事業活動を通じたインパクトを測定・報告する過程では、活動に対する組織全体の理解が深まるだけでなく、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。
>> 「統合報告書」「サステナビリティレポート」との違いとは?
今インパクトレポートが必要とされる背景
2022年6月に岸田内閣が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、「 従来の『リスク』、『リターン』に加えて『インパクト』を測定し、『課題解決』を資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要がある。」として、インパクト投資に関する方針が示されました。
(参照:『経済財政運営と改革の基本方針2022』内閣府)
現在も、国内ではインパクトスタートアップに対する総合的支援やインパクト投資の案件創出が推進されるなど、企業の新たな評価尺度としてインパクトが注目されています。その中で企業が社会的価値を創出し、適切に測定・報告する重要性が高まっています。
CSR活動やSDGsとの関連性
インパクトレポートは、従来のCSR活動やSDGsへの取り組みとも密接に関連しています。CSR活動をはじめとする取り組みの成果を定量的に示し、SDGsの各目標達成にどれだけ貢献しているかを具体的に明示にすることで、企業の社会的価値創造の全体像を可視化することができます。
B Corp認証とインパクトレポート
「B Corp」とは、高い基準で社会や環境に配慮した事業活動を行う企業に与えられる国際認証制度で、米国の非営利団体B Labが運営しています。認証を受けた企業は、3年ごとの更新時に「B Impact Report(Bインパクト・レポート)」の提出が求められるため、インパクトレポート発行を通じて自社の取り組みを示し続ける必要があります。
※現在、日本法人のB Corp認証取得企業は43社。(2024年8月時点、参照:『B Corp認証取得企業』B Lab)
>> 全方位的なサステナビリティを評価する「B Corp認証」。日本における現状と課題とは
国内におけるインパクトレポートの事例
株式会社三井住友フィナンシャルグループ|社会的価値の創造を経営の中核に
株式会社三井住友フィナンシャルグループが2023年に発表した中期経営計画では、基本方針の柱の一つとして「社会的価値の創造」を掲げています。2024年に同グループはインパクトレポートを公開し、社会的価値を創造するための5つの重点課題(環境、DE&I・人権、貧困・格差、少子高齢化、日本の再成長)に向けたKPIと実績を提示しました。
また、同グループでは3つの側面から「インパクト」を捉えているとし、上記の取り組みと成果の可視化に加え、金融ソリューションの拡充としてビジネスにおけるインパクト評価の活用も明示しています。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ「インパクトレポート 2024~SMBC グループの 社会的価値創造~」
株式会社メルカリ|サステナビリティレポートからインパクトレポートへ
2020年から3年にわたり「サステナビリティレポート」を発行してきた株式会社メルカリ。2023年には「インパクトレポート」に名称変更し、ポジティブインパクトをはじめ中長期的な企業価値を伝えることに注力し始めました。
同社が取り組むべき社会・環境における重点課題を「5つのマテリアリティ」と掲げ、それぞれに対して実施したアクションと成果が具体的に示されています。たとえば、「メルカリ」のサービス利用により年間約53万トンの温室効果ガスの排出を回避したことが示されるなど、数値と図解を通じてポジティブインパクトがわかりやすく提示されています。
株式会社メルカリ|2023年度版 「Impact Report」
⼀般社団法⼈IMPACT Foundation Japan|東北で社会課題に挑む団体を集約、リアルタイムで更新できるインパクトレポート
東日本大震災により社会課題が先鋭化した東北で、課題解決に向けた持続可能な事業が生まれ育つエコシステムを創り、地域の復興と成長を支えるべく、社会起業家の育成・支援活動を広げてきた⼀般社団法⼈IMPACT Foundation Japan。
社会起業家と企業・自治体との連携サポートを強化するため、ICHI COMMONS株式会社と共同で「オンライン版インパクトレポート」を制作。紙面で更新する負荷を軽減し、社会起業家自身がリアルタイムで活動内容を更新できる特設サイトとして公開しました。
現在は東北6県で活動し本取り組みに賛同する37団体を掲載(2024年9月時点)。掲載団体や活動内容は随時アップデートされます。各起業家の取り組みによる社会へのインパクトについて各団体の重要指標を示し、コミュニティの共通指標を通じて全体像を可視化できる他、起業家自身が当サイトでリアルタイムに活動を発信していくことで、企業・自治体との連携を目的とした認知や接点を生むことができます。
東北社会起業家が生み出すインパクト|オンライン版インパクトレポート
おわりに
今後、インパクトレポートは単なる報告書にとどまらず、企業の持続可能性と競争力を高める戦略的なツールとして、経営戦略に深く組み込まれていくことが予想されます。成果と課題を提示し、継続的な改善を行うことで、企業の内外にも好影響を及ぼしながら、持続可能な成長につなげることができるでしょう。
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ICHI COMMONS株式会社では、インパクトレポートの作成をはじめ、企業の社会課題解決に向けた取り組みをサポートしています。
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