三木プーリ株式会社は、80年以上の歴史をもつ伝動・制御機器の総合メーカー。
Society5.0への移行やSDGsが進展しているなか、企業として新たな役割や責任を考えるきっかけとして、従業員参加型で寄付先が選定できるICHI COMMONSのサービス『わくわく寄付コンペ』をご活用いただきました。
同社は、関連子会社がある山形県米沢市及び、テクニカルセンターがある神奈川県座間市で社会課題の解決に取り組む5団体に対し、計200万円を寄付しました。
今回は、総務本部の平賀康明さん、髙萩裕士さんに、『わくわく寄付コンペ』を導入した経緯や、社内での進め方、1年で感じた成果や今後の展望について、お話を伺いました。(以下、発話は敬称略)
<こんな企業の参考になります>
・社員間のコミュニケーションを活性化させたい
・社員参加型で、社会貢献活動に取り組みたい
・サステナビリティ活動を進めたいが、具体的に何をしたら良いかわからない
導入時の課題:「サステナブル化」の具体的な活動プランが不透明
――『わくわく寄付コンペ』の導入前に抱えていた課題は?
平賀:当社では、ICHI COMMONSさんと出会う前に、経営ビジョンや理念の見直しを行なっていました。
ちょうど2021年10月に社員に公開された当社の新しいビジョンが「ビヨンド・メカトロニクス」で、これを達成していくうえでのベースになるキーワードが「スマート化」「サステナブル化」「サービス化」の3つでした。
ビジョンは会社から提示されたものの、社員からすると、「サステナブル化」という言葉があまり身近ではなく、言葉としての「サステナブル」を認識はしていても、それがいったい当社の事業とどう関連するのか、会社が具体的に何をしていくかまでは、社員も不透明な部分が多かったと思います。
これからの具体的な活動プランを模索している中で、ICHI COMMONSさんから、当社の山形県米沢工場の開業40周年に合わせて「米沢へ送ろう、私たちからのありがとう」をコンセプトとした『わくわく寄付コンペ』の提案をしていただきました。
当社としても、米沢に関連子会社ができてから40年が経ち、特に地域貢献に対して明確な取り組みができていなかったので、非常に有意義な活動ができたと思っています。
導入理由:社員参加型のシステムで、継続的に活動ができると感じたから
――『わくわく寄付コンペ』導入の決め手となった点は?
平賀:決め手は二つありました。
一つめは、思いつきで寄付をするのではなく、継続的に課題解決に貢献できる仕組みが整っていたことです。
総務部には、寄付関連だけでなく、地元のスポーツチームや自治体主体のイベントのスポンサー依頼や協賛依頼が来たりすることがあります。
社会や地域貢献の活動は会社としても気にはなっていましたが、継続的にやるとなると、やり始めることに対してのハードルがありました。
もう一つは、社員参加型で、地域・社会貢献活動に取り組めることです。
『わくわく寄付コンペ』のように、社員が会社のお金の寄付先を決められる機会はないと思っています。
経営層が「社員にサステナビリティ活動に興味を持ってもらいたい」、「社員参加でやりたい」と考えていたため、この活動を通じて、社員間のコミュニケーションが活性化していくこともねらいの一つでした。
『わくわく寄付コンペ』は、従業員エンゲージメントを高めたいと考えている企業さんと相性が良いと思います。
活動の進め方:わくわく寄付コンペ委員会を立ち上げ、社員主導で活動
――実際にどのように活動を進めていきましたか?
平賀:以下の順で進めました。
①従業員向け勉強会、アンケートの実施
②サステナビリティ委員会の立ち上げ
③『わくわく寄付コンペ』の実行
④寄付先団体とのセッションの実施
勉強会、アンケートの実施
――従業員向けにサステナビリティ勉強会やアンケートを実施してみての感想は?
平賀:「意外とみんな知らないんだ」と思いました。
総務部にいると、普段から業務で法的規制などの分野に触れることもあり、ある程度サステナビリティや社会への意識はあるんですが、他の社員の意識は薄いということが率直な私の感想でした。
髙萩:数名の社員からはアンケートに「もっとこうした方がいい」「うちの会社は全然できていない」などの意見を記載いただいた一方で、SDGs関連のことをほとんど知らない人も多かったです。
勉強会後に社員から、「世間ではSDGsって言っているけど、会社が取り組もうとしているのはこういうことだったんだ」などの声が届いたので、勉強会などを経て社内のベースを整えられたと思います。
わくわく寄付コンペ委員会の立ち上げ
――わくわく寄付コンペ委員会のメンバーはどのように決定されましたか?
平賀:当社としても初めての取り組みだったので、総務部が主導しようという意図もあり、総務部の中堅メンバーを中心に組織しました。
サステナビリティには、トップダウンで下ろしていく部分と、ボトムアップで社員目線を大事にしていく部分の両方が必要だと考え、その他のメンバーは、労働組合の上層部と、組合の中で社内イベントなどの企画・運営の経験がある若手で構成しました。
当社の場合、委員会に人を配置するときには必ず上司に相談をして、上長間での調整をしたうえで、上司から本人に伝えるようにしています。
要は、「わくわく寄付コンペ委員会も仕事の一つ」ということを明確に伝えるために、上司から伝えるようにしています。
――わくわく寄付コンペ委員会の規約は、以前からある他の委員会規定を基に作成をされたんですか?
平賀:そうですね。このような委員会活動は、規定や規約がないと、そのときにいる人たちの熱量で活動が決まってしまうことがあります。
人が入れ替わったときに、運用できなくなったり、活動の方針がぶれてしまうことがないよう、委員会の目的や運用方法を明確にしました。
新しく入るメンバーが何をやっていいかわからないことがないように、委員としての役割を示すためにも規定などは必須だと思います。
――委員会の開催頻度は?
髙萩:当社では、ICHI COMMONSさんと打ち合わせをする前日に委員会を開催し、委員会で議論して出てきた不明点などを翌日の打ち合わせで解消するフローにしています。
ICHI COMMONSさんとは、毎週30分のオンライン定例会をやっていたので、委員会の一員みたいな立ち位置で一緒にやっていただきました。
例えば、『わくわく寄付コンペ』を初めて社内で開催する際は、社員への通知タイミングなどの細かいアドバイスなどをいただきながら進めることができたので、とても心強かったです。
――社員の皆さんにはどのように周知していきましたか?
平賀:デジタル版の社内報に「寄付を行った団体とセッションをしました」という記事を掲載し、活動内容をPRするようにしています。
少しでも社員が興味を持つように、文字だけではなく、当日の録画も添付しています。
髙萩:ICHI COMMONSさんに作成いただいた各地域のポスターも周知に使用させていただきました。米沢の工場にもポスターが貼ってあり、会社として活動に取り組んでいることが日々実感できるようになっています。
取り組んでみての感想:自分たちでは得られにくい社会課題の情報や、活動団体にアクセスできた
――実際に『わくわく寄付コンペ』に取り組んでみて、いかがでしたか?
髙萩:従業員を巻き込むとなると大変かと思いましたが、特に大きな問題もなく、スムーズに使うことができました。
寄付先候補団体のプレゼンページには、動画と文章の二種類で掲載されているので、動画を通して寄付先団体の雰囲気を見たい人にも、時間がなくて文章を読んで投票先を決めたい人にも、見やすいページになっていて良かったと思います。
また、私たちの寄付金が寄付先団体の活動の中で有効的に使われていることが、レポートという形で見える化されるので、活動の意義を実感できています。
寄付によって生まれた社会的インパクト例
寄付先団体:特定非営利活動法人 青空保育たけの子
・福島県福島市から山形県米沢市まで保育送迎ができた園児:毎日5名
特定非営利活動法人 青空保育たけの子 活動レポート より抜粋
・インターンシップ生の受け入れ人数:2ヶ月間で7名
・週末の事業(食農体験、こども食堂)に参加した人数:2ヶ月のうち食農体験20名、こども食堂6名
平賀:寄付先を選ぶ際には、ICHI COMMONSさんが作成されている「地域課題ページ」が大変参考になりました。
都道府県レベル、市レベルの地域課題は自分たちではなかなか情報が得られないので、地域課題のワーストがわかることで、寄付コンペの投票時にも役立ちました。
社会課題・地域課題ライブラリとは?
複雑に絡み合っている「48の社会課題」と「47都道府県の地域課題」をわかりやすくまとめています。私たちはまずは、身のまわりにある課題を知ることが大事だと考えています。
参考:山形県 山形県米沢市
『わくわく寄付コンペ』導入後の効果
効果①:社員のモチベーションが向上
――実際に『わくわく寄付コンペ』に取り組んでみて、いかがでしたか?
髙萩:従業員を巻き込むとなると大変かと思いましたが、特に大きな問題もなく、スムーズに使うことができました。
社内の投票率もコンペを開催するたびに上がっていったので、「社内に『わくわく寄付コンペ』の認知してもらう」という1年目の目標はクリアできたと思います。
<三木プーリ従業員の投票率>
2022年10月:81.5%(投票数:235/288票)
2023年 2月:86.3%(投票数:246/285票)
――本活動を通して、メンバーの発言や行動が変わったなど、具体的な行動変容を感じられたことはありますか?
平賀:委員会のメンバーは、主体性を持って自発的に動いてくれていたと感じます。私が一番変わったと思うメンバーは、本プロジェクトを進めてくれた髙萩です。
社会課題に取り組まれているNPOなどの活動にも興味を持ち始めていますし、実際の活動につなげていこうとしている今の会社の方針にも、彼の気持ちが強く影響しています。
サステナビリティ委員会を主体的に先導していってくれたのも彼ですし、委員会以外の分野でもリーダーシップをとりながら仕事を進めてくれています。
会社のために企画書も自らたくさん書いてくれるようになり、現在は近隣より購入した土地を公園化して社員の憩いの場を作るプロジェクトも先導しており、社員のモチベーション向上にもつながっていると感じます。
効果②:関連地域で活動する団体とつながることができた
――2022年度はどの地域の団体に、いくら寄付をしましたか?
平賀:関連子会社がある山形県米沢市及び、テクニカルセンターがある神奈川県座間市で社会課題の解決に取り組む5団体に対し、計200万円を寄付しました。
――寄付先団体とのセッションを実際にやってみていかがでしたか?
平賀:セッションでは、団体の方々が社会課題に取り組む背景や、いろいろなことを考えながら活動されていることを知れたので、本当にやって良かったです。
それと同時に、当社としてもまだまだやれることがあるんだなと実感しました。
――今後、三木プーリさんとして、もっと取り組めると思ったことを教えてください。
平賀:米沢市であれば、就業トレーニングを支援している団体さんとつながったので、会社見学の一つとして当社の工場を見学していただくこともできると思います。工場見学と併せて、地域の若年層の方と一緒にご飯を食べる時間を設けるのもいいですね。
また、例えばNPO法人神奈川県視覚障害者福祉協会さんは、当社のテクニカルセンターととても近いところで活動されているので、主催イベントにスタッフとしてお手伝いしに行くことなどもできると考えています。
まずは委員会メンバーでそういった活動を試験的に進め、2023年度は人的な支援活動に軸足を置いていきたいと思っています。
寄付先団体様とのセッションの様子はレポートにまとまっています!
・神奈川県視覚障害者福祉協会×三木プーリ
・With優×三木プーリ:
・ざま災害ボランティアネットワーク×三木プーリ
今後の展望:社員が“社会に貢献できている”という実感が持てる活動を増やしていきたい
――今後の課題と取り組みを教えてください。
髙萩:今年1年間は、社員にわくわく寄付コンペを認知してもらうことを一番に考えて活動してきました。
今後は投票だけではなく、「社員が自分の時間を使って社会に貢献する」というところに対して、我々としてどのような働きかけができるかを考えていきたい思っています。
今年からは委員会としても仕掛けを考えていき、社員が自発的に社会・地域課題の解決に取り組めるような風土にしていきたいです。
平賀:ビジョンにある「サステナブル化」を会社全体で取り組んでいるということを社員が実感できたり、その取り組みに社員自身が参加して社会に貢献できている実感が持てる活動を増やしていきたいです。
企業プロフィール
社名 : 三木プーリ株式会社
事業内容: 伝動機器の開発・製造・販売
従業員数: 950名(連結)(2022年3月現在)
サイト : https://susnet.jp/corps/mikipulley
導入時期: 2022年4月
担当部 : 総務本部(執行役員/本部長・平賀さま、総務課・高萩さま)
まずは自社が貢献できる社会課題を診断してみませんか?