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目的志向のハック思考。ICHI COMMONS CTOに聞くAI時代の社会課題解決



「誰もが社会課題解決の主役になれる」というビジョンを掲げ、企業のサステナビリティ経営やNPOとの協働を支援するICHI COMMONS。その実現に向けてテクノロジーの力で挑戦を続ける共同創業者/CTOの河西が、仕事内容や業務を通じて目指す未来について語りました。


ICHI COMMONS株式会社 CTO
河西 智哉

1992年7月28日京都生まれ。京都大学在学中にプログラミングを学び始め、C言語やCommon Lisp、Rubyなど様々な言語に触れる。22歳の時に、サムライト株式会社に入社して5ヶ月でCTOに就任、以来複数社のアプリケーションエンジニア、テックリード、CTOを歴任する。独立後は多数スタートアップのゼロイチ開発パートナーとして活動。事業開発に留まらず、VCやインキュベーション活動を日本の企業、投資家と共に経験。好きなこと、楽しいことをやる人生が何より大切。ものを作って世に出して、便利になっていく社会を楽しみたい。

オンラインとオフラインの交差点を作りたい

はじめに、ICHI COMMONSと出会ったきっかけを教えてください。

ICHI COMMONS創業の数か月前に、共通の知人から「開発に関する相談に乗ってほしい」と紹介されたのが、代表の伏見でした。前職を辞めるタイミングだったこともあり、次にやりたいことを考えていたので、まずは話を聞いてみようと思ったんです。

最初に聞いたのは、今の「サステナNet」の前身となるポータルサイトの構想でした。ただ、フリーランス時代にベンチャーの立ち上げ支援をよくやっていたので、最初から大きなものを作ってうまくいった例をほとんど見たことがなかったんです。なので、事業自体をどう作っていくのがよいのか、壁打ちしていくことから関わり始めました。

参画の決め手は何でしたか?

それまで僕はいろんなWebサービスやアプリのプロジェクトに関わってきましたが、オンラインで完結するサービスがほとんどでした。だからこそ、オンラインとオフラインが交わる領域に関わってみたいと思っていたんです。

ICHI COMMONSが取り組む社会課題解決の領域は、オフラインがメインの世界。現場を持つNPOの活動が、すぐにオンラインだけで完結するようになるわけではない。構想的に作っていくのはWebやアプリのオンラインサービスでも、そこでマッチング機会を作ることで、オフラインでのつながりが生まれ、その先の現場での活動が盛り上がっていく。そんなサービスを作れるのは面白そうだと思いました。

また、伏見の人柄も決め手でした。当時は会話の20〜30%くらいが英語なのに、中身はめちゃくちゃ日本人で、メールの書き方で悩んだりするギャップがすごく面白かったんです。そんな細かいところで悩みながら、真剣に日本で社会課題解決ビジネスの市場を生み出そうとする姿に魅力を感じました。

創業当初

ハック思考でサービスを創る、社会課題解決への技術的アプローチ

現在はどのような業務をされているのでしょうか?

基本的には、開発チームをマネジメントしながら、伏見と一緒に方針を決め、「サステナNet」をはじめとするサービスを作っていくことがメインです。現在の開発チームは、デザイナーとエンジニア合わせて5名ほど。創業当初は合宿などで事業の立ち上げや方向性をとことん考えながら、「サステナNet」や「わくわく寄付コンペ」、「チャリーン」などのサービスを開発してきました。

プロダクト開発が、どのように社会課題解決に貢献していけると考えていますか?

プログラムを書いたり、システムを開発したりすることは、あくまで”手段”だと捉えています。社会課題を解決するための方法の一つであって、それ自体が目的ではないんです。

ただ、この”手段”が持つ可能性は大きいと思います。特にNPOや社会課題に取り組む団体が直面している課題を考えると、テクノロジーの力で解決できることがたくさんあります。どの団体も人手不足で悩んでいますし、専門知識を持った人材も限られています。

例えば、助成金の申請書類。書き方が分からなくて諦めてしまう団体も多いんです。これまでは人と人をつなぐ形でサポートしてきましたが、今後はAIをはじめとするテクノロジーを使ってできることを増やしていくことも、社会課題解決の形だと考えています。課題解決に取り組む人たちの負担を減らし、本来の活動に集中できる環境づくりをサポートしていきたいです。

働く上で大切にしていることは何ですか?

目的を常に意識し続けること。一つの機能を作るところから経営の意思決定まで、あらゆる場面で目的と手段は混同されがちですが、「今の目的は何か」を常に意識しています。

BtoBでもBtoCでも、お客様がお金を払うのは何かの価値があるからで、提供手段はオンラインでもオフラインでも良いケースは多くあります。特にオンラインサービスを作る際は、作ること自体が目的になってしまうことがよくあるため、HOWの話ではなく目的自体を意識するようにしています。会議でもよくこの視点を話しています。

仕事でやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

作ったものや提供したサービスが使われることですね。当社でいうと「わくわく寄付コンペ」や「サステナサマリー」が、現場でどう使われているのかを聞くことが好きです。経営会議で使われたり、社員へのカルチャー浸透のために使われたり、いろんな使われ方をしながら広がっていく。作って終わりではなく、その先でどう使われて、そこから何が生まれたかを知るのは嬉しいですね。

あとは、目的を考えた上でそこまでの最短ルートを見つけられた時も楽しいです。伏見が悩んでいる時に「それって何やりたいんだっけ?」とツッコむこともよくあります。ポール・グレアムの『ハッカーと画家』に出てくるようなハック思想が好きで、そういう視点で問題解決できた時は特に楽しいです。

代表 伏見との一枚

AIが拡げる「誰もが社会課題解決の主役になれる世界」

 「誰もが社会課題解決の主役になれる世界」というICHI COMMONSのビジョンを、どのように解釈していますか?

少し前は、「誰もが」といっても「世界中の誰でも」ではなく、基本的には「社会課題を解決したいと思った人」が参加したいと思ったところに参加できる、貢献したいと思ったところで活躍できるビジョンだと思っていました。

でも、最近少し捉え方が変わってきました。AIの発展を見ていると、普通に生活するだけなら人は働かなくてもよくなるんじゃないかと感じるんです。”働かなきゃいけない”、”やらなきゃいけない”をなくすことで、「誰もが」の範囲が広くなるんじゃないかと。

AIがなんでもやってくれる世界で人間がやるべきことは、何かを作るとかではなく、何かを報告することだと思っています。AIにインプットすること。そうなればもっと誰でも、声を一言あげるだけで何かを解決できるようになるんじゃないでしょうか。

今後の目標や挑戦したいことを教えてください。

AIの進化スピードは本当に速くて、ChatGPTが登場してからわずか数年で、すでに使い方も大きく変わりました。今のAIは指示を細かく出すより、むしろ「任せる」方が良い結果が出ることも多く、将来的には、もっとシンプルな形でAIと関わるようになると思います。「この地域で水不足が起きています」「子どもたちが通える学校が欲しい」といった声をAIが集めて分析し、最適な解決策を見つけ出す。そんな世界が近づいているんじゃないでしょうか。

最近考えているのは、社会課題に関する「良質なデータ」を集める仕組みづくりです。NPOの活動現場や地域のニーズを効率的に集めて整理し、AIに提供できる基盤を作ること。これが僕たちの新たな役割になるかもしれません。まだ具体的な形にはなっていませんが、一人ひとりの声をAIにつなげる橋渡し役として、サービスを進化させていきたいと考えています。

最後に、ICHI COMMONSに興味を持っている方へメッセージをお願いします!

いろんな考えの人がいる会社なので、このインタビューだけが全てではありません。普通の会社にいないような人たちばかり集まっていて、いろんな偏りを持った人の話が聞けるんです。ベンチャーの中でも特殊で、みんなベンチャー出身者でもなく、会社員歴の長い人もいない。多様で面白い価値観を持った人たちと一緒に働ける環境が、ここにはあります。

 


どうもありがとうございました!
 
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