水曜日を中心に、企業人がボランティアや社会貢献活動に取り組む「ソーシャルウェンズデー」。プログラム内のNPO現場訪問によって生まれた協働について、サントリーホールディングス株式会社の村田様、NTT株式会社の魚部様、認定特定非営利活動法人こまちぷらすの森様に話を伺いました。
NPO側からの呼びかけと明確な“関わりしろ”が生んだ、自主的かつ継続的な取り組みとは。三者それぞれの視点から、継続する協働のヒントを探ります。
お話を伺った方(写真左から)
- サントリーホールディングス株式会社 村田様
- NTT株式会社 魚部様
- 認定特定非営利活動法人こまちぷらす 森様

ソーシャルウェンズデーから始まった自発的な取り組みとは
── まずは、今回の協働のきっかけとなったソーシャルウェンズデーでの出会いについて教えてください。現場訪問の際、森さんから「もう一度時間をください」というオファーがあったそうですね。
森: リーダープログラムの一環として、村田さんや魚部さんたち企業の方々が、私たちの活動拠点である横浜のカフェまで足を運んでくださったんです。 そこで私は、これまで何百回と説明してきた事業内容をプレゼンしたのですが、皆さんから「そもそも課題設定はそこでいいのか」など、活動の根幹を問い直すような、ものすごく熱量のある反応をいただいたんです。
村田: 私は本業でもCSRや地域の子どもたちの居場所づくりに関わっているので、ある種、視察のような気持ちで参加していました。でも、森さんのお話を聞けば聞くほど、もっと事業説明を整理できるはずだという思いが湧いてきて。
一つひとつの活動は素晴らしいのに、それがどう繋がってどんなストーリーを生んでいるのかが、まだ少し見えにくかったんですよね。だから模造紙を広げて、みんなで「これってこういうこと?」「ここが繋がってるんじゃない?」と図解し始めたんです。
魚部: 私も最初は、短時間でNPOの活動全体を理解するのは難しいだろうと感じていました。森さんから「どうやって活動を広げていくか」という相談を受けたものの、強みや全体像が掴みきれなくて。でも、現場に行って皆さんと議論する中で、活動一つひとつから実はすごい循環が起きているんじゃないか?と、霧が晴れるような瞬間があったんです。
森: 皆さんがキーワードを出しながら整理してくださったおかげで、私自身も気づいていなかった活動のサイクルが見えました。事業をやればやるほど参加者が増え、コミュニティが強くなり、それが子どもたちを支える環境になる。今まで使っていた「循環」という言葉以上のものを実感し、言葉の使い方も考えるようになりました。
同時に、今の整理された状態で、もう一度ちゃんと資料を作り直したい。そのためには、皆さんの力がどうしても必要だと直感したんです。だから、その場で思わず「もう一度時間をください!」とお願いしました。

── 企業のお二人は、森さんからの突然のオファーをどう受け止めたのでしょうか? 普段の業務とは異なるNPOの現場で、戸惑いはありませんでしたか?
魚部:私はこれまでCSRやNPOといった分野に全く関わりのないキャリアを歩んできました。なので最初は、自分が役に立てることなんてあるのか、勉強させてもらう立場でいようくらいに思っていたんです。 でも、私が何気なく発したコメントや質問に対して、森さんがすごく真剣に耳を傾けてくださって。
企業で当たり前にやってきた、情報を整理して伝えるというスキルが、NPOの現場ではこんなにも喜ばれるんだ、価値あるフィードバックになるんだというのは、私にとっても大きな発見でした。
村田:それはすごく分かります。企業側にとっても、自分のバリューを再確認できる場なんですよね。 私も営業を長くやってきて、プレゼン資料は何万回作ったか分かりません。でも、物を売るための資料も、社会活動を伝える資料も、本質は一緒なんです。誰に、何を、どう伝えるか。 今まで培ってきたビジネススキルが、社会課題の解決に直結する手応えを感じられる。これは企業人として、純粋に嬉しい体験でした。
「単発のボランティア」で終わらせず、継続的な関係を築けた秘訣
── その後、具体的にどのようにプロジェクトは進みましたか? 「次も会いましょう」と言っても、実際にはスケジュールが合わずに立ち消えになることも多いと思います。
森:明確な「宿題」があったことが大きかったと思います。 私は現場訪問の後、いただいたフィードバックを元に必死でプレゼン資料を作り直しました。テーマは、寄付先に対してどう事業を紹介するか。これを村田さん、魚部さんたちに見てもらうために、オンラインとオフラインの両方でまた集まっていただいたんです。
村田:私たちが大事にしていたのは、堅苦しい会議ではなく壁打ちのスタンスでいること。 森さんが作ってきた資料に対して「ここはもっとこう表現した方が刺さる」「この言葉は分かりにくい」と、率直に意見を出し合いました。NPOと企業の協働において、この素直に壁打ちできる関係を作れるかどうかが、継続のポイントだと思います。
魚部:正解を教えるのではなく、一緒に考えるプロセスでしたよね。 森さんが最初は「どうやって収入を増やすか(HOW)」という方法論ばかり気にされていたので、まずは「こまちぷらすとは何者か(BE)」が伝わらないと、応援してくれる人を増やせないとアドバイスしたり。
森:そのご指摘は本当に目から鱗でした。「まちづくり」という言葉を使っていたら、「それは内部視点の言葉だから、『コミュニティビルディング』と言い換えた方が対外的に価値が伝わるよ」とか。自分たちだけでは絶対に出てこない、外からのラベルを貼っていただけたのは本当に助かりました。
村田:あと、継続できた理由として、楽しかったからというのは外せませんね(笑)。私の場合、これは完全にライフワークでした。会議室で真剣に議論した後は、みんなで飲みに行って。仕事の利害関係がない社外の仲間と、美味しいものを食べながら真剣に語り合う。この時間がシンプルに楽しかったんです。
魚部:同感です。自分の意見に対して、森さんが本気で喜んでくれる。社内調整やしがらみ抜きに、純粋な貢献ができる。忙しくてもまた参加したいなと思いました。
協働から生まれた変化とこれから
── 皆さんとの壁打ちを経て完成した資料は、その後どうなったのでしょうか?
森: それが、本当にすごいことになりまして……!とある企業さんから「寄付を検討をしたい、プレゼンにきてもらえないか」とお話があり、ブラッシュアップした資料を使ってプレゼンをしたら反応がとてもよく、すぐにご寄付を決めてくれました。また、こども家庭庁「こどもまんなかアワード」の視察対象に選ばれた際もこの資料を使ってプレゼンをした結果、内閣総理大臣表彰を受賞することができました。
本当に、あの時皆さんに資料を直していただいていなかったらと思うと、ぞっとします。 特に大きかったのは、「経済合理性」と「その外側にある価値」を分けて言語化できたこと。私たちの活動は、数字には表れにくいけれど、こんなに豊かな「循環」を生み出しているんですと、胸を張って説明できるようになりました。

(右)ブラッシュアップを重ねて作成した事業の循環がわかる資料
村田:関わったアウトプットが具体的な成果に繋がったと聞くと、私たちも本当に嬉しいですね。共感が生まれるには、理論と感情の両輪が必要です。現場に行って感情的に共感し、ビジネススキルで理論的に武装する。その両方が噛み合って一緒に考えることができたからこそ、外部の評価にも繋がったのだと思います。
魚部:私も、現場に行き解像度が上がったことで、自信を持ってフィードバックできました。 最初は解像度が低い自分だったからこそ、初めて聞く人はここが分からないはずだという客観的な視点を提供できた。それが結果的に多くの人々を説得する材料になったのなら、こんなに嬉しいことはありません。
── 最後に、今回の経験を振り返って、これからの協働のあり方について思うことを教えてください。
森:今回感じたのは、一回きりじゃないことの価値です。よくあるプロボノやボランティアは単発で終わりがちですが、今回は現場訪問で感情を共有し、その後の壁打ちでは思考を共有し続けました。だからこそ、表面的なアドバイスではなく、経営の根幹に関わるような深い議論ができたのだと思います。 これからは、村田さんや魚部さんのような心強いパートナーと出会える機会を、もっと全国のNPOにも広げていきたいですね。
村田:私たちにとっても、これは支援ではなく学びの場でした。NPOの皆さんが持つ熱量や、社会課題に向き合う真摯な姿勢に触れることで、僕ら自身の仕事への向き合い方も変わります。今後は私も、色々な場所でこの事例を話していきたいですね。あ、あと個人的には、また戸塚に行って美味しいラーメンを食べたいです(笑)。
魚部:森さんおすすめのお店、ぜひ皆で行きたいですね。ソーシャルウェンズデー自体は続きますが、プロジェクトが終わっても、こうやって繋がっていられる関係性が何よりの財産です。特別なことをしようと構えるのではなく、「行ってみたら楽しかった」「話してみたら共感した」。そんな自然なきっかけから、企業とNPOの垣根を超えた仲間が増えていけばいいなと思います。
森:ぜひまた、美味しいものを食べながら語り合いましょう!










