株式会社ニチレイフーズは、同社の白石工場がある宮城県白石市と連携し、「環境型ふるさと納税」を通じたフードロス削減、SDGsの普及・促進に取り組んでいます。
今回は、横展開可能な「環境型ふるさと納税」の仕組みなどについて、ハミダス推進部長の吉野達也さんと、広報グループの原山高輝さんにお話を伺いました。
自社工場のある、ゼロカーボンシティ宣言の自治体と連携
——宮城県白石市との連携のきっかけや、「環境型ふるさと納税」が生まれた背景を教えてください。
原山高輝さん(以下、原山):弊社の白石工場も白石市内では比較的大きい工場で多くの雇用を創出していることもあり、白石市役所をはじめとした地域連携は以前から進んでいました。
「環境型ふるさと納税」とは、「環境にやさしい社会の実現に資するふるさと納税」を指しており、独自に作った言葉です。
2022年4月に、白石市が2050年に二酸化炭素実質排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言されたことにより、「環境にやさしい活動」に非常に賛同してくださり、実現に至りました。
——なぜ、ふるさと納税の返礼品を手段として選ばれたのでしょうか。
原山:全国のお客様に私たちの活動を知ってもらえ、商品を召し上がっていただけると考えたからです。
工場では、メーカーの出荷単位(ケース)に満たない端数の正規商品で、品質に問題がないにもかかわらず出荷できない「半端品」が必ず出てしまいます。
これまでも子ども食堂などへの寄付は行っていましたが、例えば白石市で余った美味しい春巻を九州の子どもたちに食べてもらうために運ぶことはサステナビリティとしても本末転倒です。そこで、地元で出た半端品を地元・白石市の返礼品にできたらと考えました。
返礼品にはお礼状を付け、お客様にも半端品という存在をお伝えしています。
お客様としても単に商品がもらえてうれしいという気持ちだけでなく、自分の行動がフードロス削減につながっているということを実感していただけたらと考えています。
——食品メーカーでは半端品の取り扱いが課題なんですね。
原山:冷凍食品に限らず、食品メーカーは連続ラインで製造しているので、飲料やお菓子などでも1ケースに満たない端数はあまりとして出てしまいます。
商品には製造日などを印字し、仮に混入事故などがあった場合に商品が特定できるよう管理されているため、翌日に回すわけにはいかず、正規品として問題はなくとも出荷できないことがあります。
そもそも製造日を年月日表示にすることを見直す取り組みなども始めていますが、やはりトレーサビリティの問題で難しいことも多いので、半端品の有効活用が課題になっています。
環境型ふるさと納税は「四方よし」の仕組み
——「環境型ふるさと納税」は他の子ども食堂への寄付活動などとはどう違いますか。
吉野:寄付だとある意味で慈善活動と捉えられてしまうので、企業としては利益が出ることも大切だと思っています。そういう意味で、環境型ふるさと納税はとても大きな一歩だと感じています。
なぜなら、購入者に喜んでもらえるのみならず、地方自治体には税収が入り、本来廃棄されるものの有効活用にもなり、弊社には売上が入るからです。
私たちはこれを「四方よし」と言っていて、4者(購入者・地方自治体・環境・弊社)にとってWin-Winの取り組みだと考えています。
他工場、他企業へと横展開していきたい
——「環境型ふるさと納税」の今後の展望について教えてください。
吉野:環境型ふるさと納税も、全社員が自分の担当領域を超えて自発的に取り組む「ハミダス活動」の一つとして社内に周知しています。
その効果もあり、白石工場以外でも「やりたい」という声が上がっていて、年内または来年の春先には新たに1工場で取り組む予定です。
原山:お菓子メーカー、飲料メーカーなど、どの食品企業も似たような課題を抱えていると思うので、「環境型ふるさと納税」についてはみんなで広めていきたいと考えています。
いろいろなメーカーが一緒になって、「地元工場の半端品詰め合わせセット」を返礼品にしても面白いと思います。
吉野:環境型ふるさと納税は発展性があると思うので、将来的にふるさと納税の一つのカテゴリーになったら面白いと思っています。
——他社でも真似しやすいですし、いろいろなものに転用できる点がとても良いですね。
原山:まだ他社がやっていないことを見つけ、形にして世に出すことが、私たちのハミダス活動であり、フードロス削減に向けての取り組みだと自負しています。
ハミダス活動は幅広く、比較的真似しやすい活動が多いと思うので、他社でも広がっていくとうれしいですね。
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インタビュー:平野美裕、川添克彰
文・編集:平野美裕