ICHI COMMONSは東京都と協働で、パラスポーツ競技団体と企業の連携を促進するオンラインマッチングプラットフォーム「TEAM BEYOND パラコネクト」を運営しています。本記事では、このプラットフォームを通じて実現した連携事例として、株式会社スマートスタートと日本パラ・パワーリフティング連盟の取り組みをご紹介します。
2026年3月28日に行われたラグビー・クボタスピアーズのホームゲームでのイベント「ともに生きるともに戦うパラスポーツフェス」において、参加のハードルを下げ、誰もが主体的に関われる空間を創出した共創について、両者に話を伺いました。
目次
TEAM BEYOND パラコネクトとは
「TEAM BEYOND パラコネクト」は、東京都とICHI COMMONS株式会社が協働して2025年8月に開設したオンラインマッチングプラットフォームです。
競技団体のニーズと企業のアセット(提供できるノウハウや資源)を可視化し、コーディネーターによる伴走支援を通じて最適な連携を実現します。従来は年一回の対面交流会で行われていたマッチングを、年間を通じて支援する仕組みに発展させ、障害者スポーツ環境の充実や競技団体の基盤強化を図るとともに、企業の社員エンゲージメント向上や社会共創活動の推進にもつながる新たな仕組みです。
スマートスタートと日本パラ・パワーリフティング連盟のマッチング
今回ご紹介するのは、反射神経トレーニングゲーム「REAXION(リアクション)」を提供する株式会社スマートスタート(以下、スマートスタート)と、日本パラ・パワーリフティング連盟(以下、連盟)との連携です。
スマートスタートは、ゲーム感覚で反射神経を鍛えるトレーニングツール「REAXION」を展開しています。年齢や競技経験に関係なく楽しめるゲーム性の高さが特長で、競技力向上と楽しさを両立する新しいスポーツ体験の提供を目指しています。障害の有無に関わらず同じフィールドで体験できるコンテンツが少ないという課題に対して、REAXIONが誰もが楽しみながら能力向上につながる環境を構築できるという可能性を感じ、競技団体との連携を模索していました。
一方、連盟は「筋肉で日本を持ち上げる」を合言葉に、共生社会の実現を目指して活動しています。連盟が掲げるのは、違いにフォーカスするのではなく、得意を持ち寄ることができる場を体験として提示すること。しかし、体験会ではベンチプレスという競技の特性上、重い重量を挙げることに対する心理的ハードルが高く、力に自信のない女性や小さなお子様はただ見るだけになってしまうという課題を抱えていました。
この課題に対し、REAXIONは車いすユーザーから健常のお子様まで気軽に体験できるコンテンツとして、参加の裾野を広げる可能性がありました。ベンチプレス体験とREAXIONという性質の異なるコンテンツを組み合わせ、来場者の挑戦結果(持ち上げた重量やタップ回数)を「応援ポイント」として可視化してチームに加算することで、自分に合った方法を自ら選んで応援に参加するという体験設計が可能になると考え、今回のマッチングが実現しました。
「選べる」体験設計が引き出す、主体的な応援の形
2026年3月28日、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのホームゲームで開催されたイベント「ともに生きるともに戦うパラスポーツフェス」にて、パラ・パワーリフティングのベンチプレス体験とREAXIONを同一ブース内で展開し、来場者が自分に合った方法を選んで参加できる体験方法を実現しました。

当日は子どもから大人まで幅広い層の来場者が参加。特にREAXIONは、これまで体験参加にハードルを感じて距離を置くことが多かった母娘での来場者や、小さなお子さん連れのご家族からの参加が目立ちました。REAXIONは短時間で体験が完結するため、多くの来場者が気軽に参加できた点も特長です。参加者からは「楽しい」「難しいが面白い」「思った以上に反応できない」といった声が寄せられ、初めて体験する方でも自然と繰り返し挑戦する姿が見られました。
注目すべきは、REAXIONをきっかけにした行動の変化です。最初はベンチプレスへの参加をためらっていた方が、REAXIONを体験したことでその場の雰囲気に後押しされ、ベンチプレスにも挑戦するという流れが自然に生まれました。力に自信のある方はベンチプレスで、子どもや不安のある方はREAXIONで。できそうにないから諦めるのではなく、それぞれの得意な領域で主体的に応援する状態が実現したのです。

ブース来場者のアンケート結果でも、「スタジアムがより楽しくなる」と回答した方が100%、「応援したい気持ちが高まった」と回答した方が97%にのぼり、体験を通じた応援への関与の高まりが見える時間となりました。主催のクボタスピアーズ船橋・東京ベイからも、ラグビー観戦が主目的の中でこうしたイベントが応援の気持ちにつながったことへの高い評価が寄せられています。
さらに、ラグビー選手によるREAXIONへの参加もありました。試合前にベンチプレス体験に参加することはコンディション面から難しい一方、REAXIONは短時間かつ低負荷で取り組めるため、選手が自然な形で体験に加わることができました。これをきっかけにファンの関心が高まり、パラ・パワーリフティング体験への参加につながるなど、ラグビー選手・ラグビーファン・パラ・パワーリフティング選手やスタッフといった、異なる立場の人同士が交わり新たな価値が生まれる場として機能しました。
「参加できる人を増やす」から「誰もが参加できる構造をつくる」へ
今回の取り組みを経て、両者の関係は、単にコンテンツを組み合わせるものから、体験そのものを一緒に設計していく関係へと変化しました。連盟は、REAXIONの導入によって「自分で選び、自分の得意で参加する」という体験価値をコンテンツに追加できたことが、今後の連携の可能性を広げる結果になったと語ります。
スマートスタートは、今後イベントでの体験提供に加え、競技現場における継続的なトレーニング導入やデータ測定を進めていく方針です。試合前の集中力切り替えや選手同士のコミュニケーションツールとしてのREAXION活用など、単発イベントにとどまらない発展的な連携が期待されています。さらに、パラスポーツに限らず教育現場や高齢者施設にも展開し、誰もが同じように楽しみながら能力を伸ばせる環境を社会に広げていくことを目指しています。
連盟もまた、今回の実施で得られた気づきをもとに、さまざまなスポーツイベントや地域の場への展開を視野に入れています。学校向けプログラムや企業の社員研修コンテンツなどへの発展も構想しており、スポーツの枠を超えて、主体性や共に関わる力を育むコンテンツとして成長させていく考えです。
参加できる人を増やす、から、誰もが参加できる構造をつくる。それぞれの強みを掛け合わせながら、体験を通じて共生社会のあり方を実装していく、両者の“共に形にしていく共創”が始まっています。
TEAM BEYOND パラコネクトでは、引き続きさまざまな連携事例の創出を支援してまいります。
会社・団体概要
■ 株式会社スマートスタート 反射神経トレーニングゲーム「REAXION」の提供等を展開。
https://susnet.jp/corps/smasta
■ 特定非営利活動法人 日本パラ・パワーリフティング連盟 下肢に障がいのある選手によるベンチプレス競技「パラ・パワーリフティング」の普及・強化を行う国内統括団体。
https://susnet.jp/orgs/jppf










