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親を頼れない子どもの居場所に届く、食と安心。オイシックスとブリッジフォースマイルの継続的支援

  
2025年8月、オイシックス・ラ・大地株式会社と認定NPO法人ブリッジフォースマイルが、子どもや若者たちの居場所へ食品や物品を届ける支援連携をスタートさせました。

ICHI COMMONSが運営する共助共創プラットフォーム「サステナNet」をきっかけに生まれた今回の取り組み。企業の社会貢献活動とNPOのニーズがどのようにマッチングし、具体的な活動となったのか。両社の担当者に、連携の経緯から今後の展望までを伺いました。

お話を伺った方(写真左から)

  • オイシックス・ラ・大地株式会社 コーポレートコミュニケーション部 ソーシャルコミュニケーション室 WeSupport Family リーダー 大熊氏、町田氏
  • 認定NPO法人ブリッジフォースマイル 大林氏、鈴木氏

それぞれが抱えていた課題 ─ 物資不足と支援の多様化


──今回の連携が始まったきっかけを教えてください。

大林: 私たちは虐待などを理由に親を頼れず児童養護施設や里親家庭で暮らす子どもたちが、自立をしなければならない際に直面する課題を乗り越えるため、巣立ち前から巣立った後もさまざまなプログラムで伴走支援をしています。物価も上がる中で、お米や日用品など生活に直結する物資をどう確保するかが大きな課題でした。

今回、サステナNetでオイシックスさんが「WeSupport Family」という食支援の活動をされていることを知り、サステナNetを通じてすぐに連絡をしたのが最初のきっかけです。
 

大熊: ブリッジフォースマイルさんのお話を伺う中で、親を頼れない子どもたちが18歳で施設を出て一人暮らしを始める時に直面する困難について知りました。WeSupport Familyは2021年からひとり親世帯を中心とした困窮家庭への食支援を続けてきましたが、私たちとしても支援先や支援の形をもっと広げていきたいという想いがあり、連携に至りました。

また、WeSupport Familyに協力してくださるサポート企業からは、信頼できる団体への支援を求められています。ブリッジフォースマイルさんは長年にわたって活動を続けてこられた実績があり、その点でも安心して連携できると感じました。


──連携の決め手となったポイントはどのような点でしたか?

町田: WeSupport Familyでは、これまで主にフードパントリーを通じて、ご家庭に食品をお届けする形で支援を行ってきました。求められる支援は多様である中、ひとり親世帯に限らず親を頼れない子どもたちなど、より幅広い支援先に届けられる方法を探していました。

ご提案を受けた時、他の若者支援団体ともお付き合いがあったことからも、ひとり親支援活動と若者支援活動は地続きと考えているため、ご縁があれば連携をという想いがありました。だからこそ、ブリッジフォースマイルさんの「居場所」支援活動を現場で見て、WeSupport Family活動との重なりを感じ、連携できればと考えておりました。


大林: 正直なところ、物品寄付は単発で終わることが非常に多いんです。でも、オイシックスさんの記事には「継続的な支援」と明記されていて、これが本当に大きな魅力でした。決まった時期に支援があるとわかっていることで、私たちスタッフも計画的に子どもたちをサポートできるようになるため、定期的な支援連携は私たち団体にとって大変貴重なポイントでした。

月1回、子どもたちの「居場所」に届く食と安心


──具体的にはどのような支援を行っていますか?

大熊: 2025年8月から、ブリッジフォースマイルさんが運営する「居場所」へ、月1回食品や生活用品をお届けしています。WeSupport Familyに協力してくださっているサポート企業から提供された食品や日用品を、ブリッジフォースマイルさんの居場所を通じて、子どもたちに届ける形です。

季節商品の残りや外装に傷があるものなど、品質には問題ないけれど通常の販売ルートには乗りにくい商品を活用しています。食品ロスを削減しながら、困っている方々を支援する。この二つの社会課題に同時にアプローチできることが大きな特徴です。


鈴木: 東京・秋葉原に近い「B4S PORT あきば」に届けていただいたものは、お米が30キロ、スニッカーズが1ケース、それから素敵な香りの柔軟剤も。本当に嬉しかったです。

最近は物価高でお米の量を減らして食べていたという方もいる中で、30キロもいただけたことは本当にありがたくて。居場所では週に2回食事を提供しているのですが、そこで使うお米としても活用させていただいていますし、ジップロックのような袋に小分けにして、一人ずつお持ち帰りできるようにもしています。お菓子は居場所に来た時にみんなで一緒に食べることで、コミュニケーションのきっかけにもなります。


──利用者の皆さんの反応についてもお聞かせください。

鈴木: いただく商品がちょっとおしゃれだったり、健康的だったりするので、反応はものすごく良いです。さつまいもチップスや希釈ジュースのような商品は値段も高く、最低限の生活で暮らされている方からは「スーパーで見ても買えなかった」という声を聞きます。柔軟剤もしかりで、1ランク安いものを買っているなどの話を聞くからこそ、すごくありがたいなと思います。

居場所には寄付品を並べる棚があり、お渡しする時に「これはこういう企業さんからいただいたものだよ」とスタッフからお伝えするようにしています。ただもらうだけじゃなくて、感謝の気持ちを持ってもらいたいですし、だからこそオイシックスさんのお名前は皆も知っています。憧れるような企業から月に1回いただいているということ自体が、利用者にとってもすごく心温まる、応援されていると感じるメッセージになっています。



町田: 初回の配送の時に、実際に「B4S PORT あきば」を訪問したんです。正直、それまでは報告書や資料でしか状況を知らなかったのですが、実際に現場を見て、スタッフの方々とお話しして、初めてわかることがたくさんありました。

心に残っているのは、ここは「大人版子ども食堂」だと思ったことです。子ども食堂は子どもがど真ん中ですが、ここでは多様な個性を持つ子ども・若者たちが、自分たちの居場所として、自分を取り戻すためにホッとする空間に集まっている。家族のように温かくお迎えするスタッフの皆さんの笑顔も、とても印象的でした。

家族といただきますやごちそうさまをして、対話をして、それぞれが活力を養うのが家という場所だとすると、そういう大切な時間が、この居場所の中で行われているんです。関わっている人みんながそこで元気になれるようなパワーを感じました。数字や報告書だけでは伝わらない、リアルな現場を見ることができたことは、私たち支援する側にとって貴重な経験です。

継続的な支援と、さらなる広がりへ


──この3ヶ月間を振り返って、どのような手応えを感じていますか?

大林: まず、安定的に物資が届くということが、子どもたちにとって大きな安心につながっています。月1回、決まった時期に支援があるとわかっていることで、私たちスタッフも計画的にサポートできるようになりました。

それから、オイシックスさんとの連携を通じて、WeSupport Familyという大きなネットワークともつながることができました。これは私たちにとって大きな財産です。NPOとして企業との接点を見つけることが難しいという課題がありましたが、こうして具体的な支援につながったことは本当にありがたいです。


町田: 子どもたちがどんな想いで生活しているのか、「居場所」がどれだけ大切な役割を果たしているのか。それを知ることで、私たち企業側も、より良い支援のあり方を考えることができるようになりました。

WeSupport Familyとしても、支援の形を多様化していく上で、とても意義のある連携だと感じています。ブリッジフォースマイルさんの活動を通じて、親を頼れない子どもや若者が直面している困難の実態を、より深く理解することができました。



──今後、この取り組みをどのように発展させていきたいとお考えですか?

鈴木: まずは、現在の月一度の連携を着実に継続していくことが第一なので、この関係を長く続けていけることを願っています。さらに食の支援だけでなく、子どもが抱える「体験格差」という課題にも取り組んでいきたいと考えています。

経済的に厳しい家庭では、学校外での体験機会がほとんどないという現状があります。習い事や旅行、イベント参加など、一般的な家庭の子どもたちが当たり前に経験していることができない。そういった体験格差が、将来の選択肢や可能性を狭めてしまうことも少なくありません。

私たちも月一度の郷土料理イベントなどを開催しています。こうした体験を通して、必要な知識を手に入れることが、自信や成功体験につながり、社会で頑張ってみようという気持ちにつながると考えているため、今後は企業の皆さんと一緒に、子どもたちに多様な体験の機会を提供できたらと思っています。


大熊: ブリッジフォースマイルさんとの連携は、WeSupport Familyにとっても新しい挑戦でした。今回の食支援を通じて、子どもたちが直面しているさまざまな課題を知ることができました。

私たちも実は、ひとり親世帯支援の取り組みとして、LDH JAPANさんと連携し、フードパントリーと一緒にダンスレッスンを提供するという活動も今年の夏に始めています。こうした体験格差の解消に向けた取り組みには、もともと大きな関心を持っていた分野でもあります。

これまでにも手作りウィンナー教室や醤油蔵の見学など、食を通じた体験機会の提供を続けてきました。若者支援においても、そのようなニーズがあるのであれば、横展開の可能性はあると考えています。もちろん、ニーズと適したコンテンツがうまくマッチングすることが必要ですが、食を届ける以外の支援も検討していきたいと思っています。


──最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。

大林: 親を頼れない子どもたちは、18歳で本当に一人で社会と向き合います。私たちは21年間活動を続けてきましたが、企業との新しいご縁を見つけることの難しさを日々感じています。だからこそ、今回のオイシックスさんとの出会いは本当に貴重でした。

企業からの支援は、生活を支える大きな力になるだけでなく、子どもたちに「応援されている」というメッセージを届けることができます。サステナNetのようなプラットフォームを通じて、企業とNPOの協働がもっと広がっていくことを願っています。


大熊: 企業には社会貢献したいという想いがあり、NPOには支援のニーズがある。その両者が出会う場所があることで、具体的な支援が生まれていきます。サステナNetのようなプラットフォームには、手軽に社会貢献活動に参加できるという良さがあります。オイシックスとしても引き続きWeSupport Familyを通じて、困っている方々への支援を続けていきたいと思います。




ICHI COMMONSは、企業とNPOの協働を促進する共助共創プラットフォーム「サステナNetを運営しています。企業の皆様が社会課題に取り組むNPOと出会い、今回のオイシックス・ラ・大地株式会社と認定NPO法人ブリッジフォースマイルのような協働を生み出すサポートをしています。

NPOの検索から協働事例の紹介、マッチング支援まで、企業の社会貢献活動をトータルで支援していますので、ご興味のある方はぜひサステナNetをご活用ください。