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仕組みと文化の両輪で社員を動かす。IBMのCSRに学ぶ、企業ボランティアの未来

 
経済同友会が主催する「ソーシャルウェンズデー」とは、水曜日を中心に企業人がボランティアや社会貢献活動に取り組む新たなムーブメントの名称です。ソーシャルウェンズデーを通じて、100社1万人のトライセクター人財(民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を越えて「社会価値」の創造に取り組む実践者)を輩出することを目標としています。

今回は、2025年10月に開催された第7回リーダープログラムにおける、IBMのCSR活動を学ぶセッションの様子を紹介します。

>> 第1回 リーダープログラム始動
>> 第2回 貧困家庭の学習支援現場へ参加
>> 第3回 サントリーグループの社会貢献活動に学ぶ
>> 第4回 企業とNPOが共に考える課題解決策
>> 第5回 NPOの現場で見出す課題と解決
>> 第6回  横断的な共創機会の事例とこれから

IBMのCSR全体像と、創業時から受け継がれる理念

第7回リーダープログラムでは、日本IBM CSRリーダー 下村裕美氏、CSR担当部長 大津真一氏を講師に迎え、グローバル企業が実践する社会貢献活動について学びました。

IBMのCSR活動の基盤となっているのは、1911年の創業時から受け継がれる3つの理念です。「考えよ(THINK)」 「良き企業市民たれ/社会とともに(Be a good corporate citizen)」 「教育に飽和点はない(There is no saturation point in education)」という価値観が、100年以上にわたってIBMの社会貢献活動を支えてきました。テクノロジーが変化しても、社会が根本的に異なるモデルに移行しても、その姿勢は変わりません。

そして現在IBMは、技術と社員のスキルを結集して社会課題に取り組んでいます。CSR活動は、教育と人材育成(Education and workforce development)、ソーシャル・イノベーション(Social innovation)、寄付とボランティア活動(Giving and volunteerism)の大きく3つのフォーカスエリアで構成されています。
 

 
特に「教育と人材育成」では、IBM SkillsBuildというプログラムを展開。2030年までに世界中で3,000万人にスキルを提供することを目指しており、この大きな目標の一環として、2026年までに200万人にAIスキルを提供することを掲げています。

IBM SkillsBuildは、テクノロジー教育へのアクセス拡大を目的とした無償の教育プログラムです。高校生、大学生や教職員、すでに労働市場にいる大人の学習者まで、あらゆる年齢層・学習段階の学習者と指導者を支援しています。
 

社員の8割以上が実感する、地域社会への貢献

IBMのCSR活動の特徴は、社員自身がその価値を実感していることです。IBM従業員の8割以上が、「IBMが地域社会に良い影響を与えている」と感じているといいます。
 

 
IBMとIBM社員は、世界中の地域社会に変化をもたらしています。IBMは多数のボランティア機会を創出し、社員がインスピレーションを受け、地域や地球規模の課題に関わる方法を提供しています。

具体的な取り組みとしては、IBM全体で連携した世界的なボランティアイベントや、個別にカスタマイズされたボランティア機会の設計・実施、ボランティア活動を通じた、チームビルディングやお客様・戦略的パートナーとの関係性強化、被災地域へのサポートといった活動が行われています。
 

各社の実践へ。ディスカッションから見えた可能性と課題

セッション後のグループディスカッションでは、各社が自社の文脈でどう活かせるかを議論しました。
 

 
参加者からは「個人の活動の記録、開示、賞賛、社員の企画立案までできる仕組みを持っている会社はなかなかない」「社会的な活動と経済の価値を統合する動きもある中で、あえて社会活動と経済活動をしっかりと分けることから考えられることもある」といった声が上がりました。

また、「自社のグローバルなプラットフォームを活用した寄付・ボランティア活動の可能性に改めて気づいた」という声や、「日本の企業でも社員にボランティアを推奨したり、ボランタリーなマインドセットを持つ人は広がっている。うまく仕組み化してキャプチャーをする、数字化できるところの間を埋めていきたい」という声もありました。

「最初の見える化として、ポータルを作って何かできればスタートできる」「トップ、マネジメント層の巻き込みができていないのが課題」など、各社が自社での第一歩を具体的にイメージする機会となりました。
 

仕組み化と文化醸成の両輪で、社員の社会参画を促進する

IBMの事例から学んだ最も大きなポイントは、創業時から変わらない理念を持ちながら、それを実現するための仕組みを時代に合わせて進化させ続けていることです。

「良き企業市民たれ」「教育に飽和点はない」という100年前の理念が、AI時代の今も、IBM SkillsBuildという形で具体的なプログラムとして実践されています。そして、社員の8割以上がその活動の価値を実感していること。

各社が自社のアセットを活かしながら、どのように社員の社会参画を促進していくか。ソーシャルウェンズデーのリーダープログラムは、そのヒントを提供し続けています。

 


 

サステナPressでは、引き続きプログラム内容をご紹介するとともに、トライセクター人財の活躍や共創事例、これからの社会課題解決の新たな形を探っていきます。